月別アーカイブ: 2026年 8月

自己破産申立前の不動産の売却

1 自己破産では、不動産は手放すことになるのが原則

自己破産は、裁判所に申請して、税金等一部を除いて借金が0円になる手続きです。

そのかわり目ぼしい資産は手放さなくてはならないので、所有の不動産は手放すことになるのが原則です。

2 不動産の手放し方は、大きく分けると3つ

自己破産で不動産の手放し方は、大きく分けると3つに分かれます。

1つは、債権者が競売するのを待つ形です。たとえば住宅ローンが残っている自宅なら、住宅ローンの債権者が抵当権という担保をつけていますので、数カ月返済しなければ競売して、裁判所を通じて強制的に不動産を売却してしまいます。

2つ目は、破産管財人が不動産を任意売却する形です。破産のうち、管財人という第三者的立場の弁護士が選任されるケースでは、破産管財人が不動産を売ろうと試みます。

3つ目は、自己破産する方が自ら任意売却する形です。破産管財人が選ばれないケースや、選ばれるのは破産開始決定後であることから、破産開始決定前に自ら売るケースもあります。

3 自ら不動産を任意売却するメリット

先ほどの1つ目と2つ目は、自己破産する方自身が不動産を売り出す手続きは必要ないので、どうせ不動産を手放すならその方が楽と思う方もいらっしゃるでしょう。

そのようなケースもありますが、自ら不動産を任意売却することにもメリットがあるケースがあります。

1つは、不動産を売却することで破産の費用や引越し代が捻出できるケースです。

自己破産にも数十万円、ケースによっては100万円以上の費用がかかりますが、不動産を売却することでこの費用を捻出できるケースがあります。

また、引越代も数十万円かかりますが、住宅ローンの方が高くで売っても返し終われないケースでも、住宅ローン債権者と弁護士が交渉する等して引越代をみてもらえるケースも

あります。

2つ目は、自己破産手続きが早く終わる可能性があります。

自己破産のうち、管財人がつくケースでは、不動産が売れて債権者に財産が配当されるか、売れないことがほぼ確定して管財人が諦めるまで、破産手続きは終わりません。

これでは破産手続の開始決定から1年近くかかることもありますが、不動産が先に売れていれば、財産が残っていないとして早く自己破産を終えられるケースもあります。

ただ、不動産の売り方に注意すべき点もありますので、詳しくは弁護士までおたずねください。

経営者保証ガイドラインと残せる資産

1 経営者保証ガイドラインは、保証人(が依頼した弁護士)と債権者が話し合って、どこまでの保証債務をまけてもらえるのか、裏を返せばどこまでの資産を保証人が手元に残してお

けるのかの基準を示しています。

ここではその概要をお伝えして、法人の破産等を検討されている代表者が、自身の債務(多くは法人の保証債務)がどこまで減って、どういう資産が残せるのかをみていきます。

2 資産総額が99万円以下なら、全資産を残せる可能性が高い

まず、経営者保証ガイドラインでは、破産手続における自由財産を手元に残すことができると定めています。

破産手続では、99万円以下の現金や小規模企業共済が本来的自由財産といってほぼ無条件に残せるほか、預金・車・自動車等が合計99万円まで比較的緩やかに自由財産拡張の対

象といって、残すことが認められやすいです。

そこで、経営者保証ガイドラインでも、資産が全部で99万円以下しかない場合、全ての資産を残す(保証債務の全部の免除を受ける)ことが認められやすいです。

3 インセンティブ資産

経営者保証ガイドラインでは、破産手続における自由財産を超えても、対象債権者にとって一定の経済合理性がある場合を保証人の手元に残すことを認めています。

これをインセンティブ資産と呼んでいます。

インセンティブ資産の上限は、主債務者(破産した法人)と保証人(代表者等)両方から債権者が払ってもらえる金額を合計して、現時点において清算した場合の回収見込額と将

来(最大3年後)に清算した場合の回収見込額を比較して、現時点の方が多ければよいというイメージです。

たとえば、現時点で法人の破産手続で500万円債権者に配当することができるが、3年間法人が事業を続けて毎年200万円ずつ赤字を出すと、3年間で600万円の資産が失

われるので、3年後に法人の破産手続で債権者に配当できる金額は0円になります(500万-600万=―100万)。

この場合、現時点で保証人に400万円の資産を残すことを認めて、保証人からの返済が0円になるとすると、現時点で債権者は主債務者と保証人を合わせると、500万+0=500万円を合計して回収できています。

3年後なら0+400万円=400万円しか回収できないのですから、現時点で400万円保証人に残すことを認めても経済合理性があると考えるのです。

これ以外にも、残せる資産の計算方法や目安がありますので、詳細は弁護士までおたずねください。