ようこそ、弁護士 岩橋 毅彦のブログへ

日々思ったこと、皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。

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個人再生で返済の見込みがあると認められる方

個人再生では,収入から生活費を支払っても余りがあって,余りで返済の見込みがあると裁判所が認める必要があります。

借金の相談に来られる多くの方がギリギリの生活をされているので,この要件を満たすか微妙な方は少なくありません。

1 認められない例:専業主婦,無職で失業保険しか収入がない

まず認められないことがほぼ確定している例をお話しします。

専業主婦の方は,配偶者の収入から返済できるとしても,ご自身は収入を得る見込みがないとして,個人再生は認められません。

また,無職の方は,年金で固定収入がある方はよいのですが,そうでない方は,認められません。

失業保険や傷病手当は,いずれもらえなくなることが決まっていますので,次の就職先が決まってその収入から返済できることが示せなければ,個人再生の

最低返済期間である3年間,収入が続くとはいえないからです。

2 派遣社員は認められることが多いが,無収入の期間が多いと問題がある

派遣社員の方は,労働者派遣法の関係で3年を超えて同じ部署に派遣されないことや,派遣先の状況で無収入になることがある点で,正社員の方より難しいケースがあります。

それでも,一定期間収入がある状態が続いていれば,個人再生が認められることが多いです。

問題があるのは,派遣先が見つからず無収入の期間や,数万円の収入しかなく生活費の方が多い月がたびたびある場合です。

この場合は,現在の派遣先に行ってからの期間や,過去の就業実績をもとに,個人再生の返済期間である3~5年間,その収入が得られる可能性が高いとどこまで証拠が出せる

かによります。

3 契約社員は認められることが多いが,契約更新の実績による

契約社員の方は,契約が更新されなければ無収入になることがある点で,正社員の方より難しいケースがあります。

こちらは,契約期間が決まっている分,契約更新の確率が最も重要です。

過去に複数回更新実績があればよいですが,ない場合は,他の同様の待遇の方が更新されているかや,過去の就業状況をもとに,個人再生の返済期間である3~5年間,その収

入が得られる可能性が高いと認められるかが問題になります。

転職歴が多い方は,転職の理由から今回の仕事が続きそうかどうかがみられたり,職の間に無収入の期間がないかどうか等も問われます。

4 弁護士への積立の実績も重要

個人再生では,弁護士に依頼した後は,債権者への返済をやめ,代わりに弁護士の事務所の口座に毎月数万円ずつ積み立てるのが通常です。

この積立額の実績が,将来返済に回すことができる額とみなされるので,積立てが途切れないことも個人再生が認められる重要な要素です。

個人再生で返済の見込みがあると認められるか微妙な方は大勢いらっしゃいますが,積立ての実績を作り,生活費の節約も合わせて行い,収入がある状態が続いていれば,認められる例が多いでしょう。

個人再生できるか不明な方も,相談自体は無料ですので,お気軽に弁護士までお問い合わせください。

 

成年後見,保佐,補助の違い

1 判断能力が衰えた方の保護の制度

判断能力が衰えたご高齢の方や障碍のある方が,財産を取られたり悪徳商法に引っかかったというご相談があります。

このような高齢者や障碍者について,家庭裁判所に申請して,他の方が同意しなければ契約できないようにしたり,契約を取り消したりできるようにして,財産を守ったり身の回りの世話をしやすくする制度があります。

判断能力が衰えた場合等に民法が想定している制度として,成年後見,保佐,補助と3つのパターンがあります。

2 主に判断能力によってどれを選ぶかが決まる

これらは,判断能力が衰えている程度によって,最も重いのが成年後見,中間が保佐,最も軽いのが補助となっています。

主治医さんや精神科医が知能テストや鑑定を行い,その点数によって,どれが相当かや,通常の判断能力を有しているかがおおむね決まります。

「おおむね」と書いたのは,最終的な判断権者は,家庭裁判所の裁判官であって,裁判官は医師の判断に拘束されるわけではないからです。

3 成年後見は,大きなお金が動くほとんどの行為を後見人が行う

成年後見では,判断能力が衰えている側の方を「被後見人」,代わりに判断する側の人を「後見人」といいます。

後見人は,親族から選ばれることも多いですが,財産額が多い場合や親族間の争いが激しい場合等は,弁護士等の専門家が選ばれることが多いです。

また,後見制度支援信託という制度で信託銀行等に口座を作って預け入れ,お金の動かし方に制限を加える場合もあります。

日常の簡単な行為を除き,後見人に契約の取消権,代理権が与えられ,居住用の不動産の売却には裁判所の許可がいる等,財産を不当に奪われないための厚い保護があります。

逆を言えば,被後見人が目ぼしい財産を動かす自由はほとんどなくなりますので,後見人は,被後見人の意思を十分尊重して活動する必要があります。

4 保佐・補助は,与えられる権限によって異なる

保佐や補助は,借金,重要な財産の処分,遺産分割等法律に定めのある行為を中心に,本人の代わりに判断する人が必要と見込まれる行為について,同意権,取消権,代理権等が選択されて付与されます。

後見人が,ほとんどの目ぼしい財産を動かす行為について権限を及ぼすのに対して,保佐人や補助人といった代わりに判断する人は,一部について,保佐人・補助人の同意なしにはできないとしたり,本人を代理して行うことができると定められるにすぎません。

 

 

新型コロナウイルスと住宅ローンの返済猶予や減額等

1 住宅ローンの減額・免除のガイドライン

新型コロナウイルスの影響で収入が減って,住宅ローンの返済が難しくなったというご相談が増えています。

令和2年8月7日の日本経済新聞に,金融庁,全国銀行協会等が,新型コロナウイルスの影響で住宅ローンの返済が見込めなくなった人に対し,住宅ローンを減額・免除する制度を整えようとしているという記事がのっていました。

東北・東日本大震災等で住宅が被害を受けた方に使われた,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を,新型コロナウイルスにも当てはめようとしているようです。

2 令和2年8月時点では,住宅ローンの返済猶予の制度を使うのが原則

令和2年8月時点で住宅ローンの返済が既に難しくなっている方は,住宅ローンの債権者と話し合いをして,返済を猶予してもらうのが基本的な対策です。

これは,新型コロナウイルスの影響の前からよく行われていたもので,たとえば住宅金融支援機構のホームページでは,①ボーナス返済の見直し②中ゆとり③返済期間の延長等が掲げられています。

②は,3~5年間程度,利息だけを支払うようにして,3~5年経過後に上乗せして返済するなどで,③は,毎月の返済額を減らして返済総額を増やす代わりに返済期間を最長15年間後ろに延ばすなどを指します。

しかし,これらは,毎月の利息分すら払えない人は使えないですし,住宅ローンの元本は変わらないので,将来今まで以上の負担額になって跳ね返ってくるのが通常です。

3 自然災害に関する債務整理ガイドラインを使う問題点

自然災害に関するガイドラインでは,ごく簡単にいうと,自然災害にあった方が,弁護士等の登録支援専門家を通じて債権者と話し合いをし,時価20万円を超える財産を手放

すことを前提に,債務を減額・免除してもらうことができます。

通常は,住宅ローンが払えず自宅を手放しても,残った債務は一括で払わなければならないのが原則ですので,自然災害に関するガイドラインが新型コロナウイルスに適用でき

るようになれば,自宅を手放せば,残った住宅ローンを請求されることはなくなりそうです。

しかし,自然災害の場合は,自宅は災害で使い物にならなくなっているのに対し,新型コロナウイルスの場合は自宅の価値はほとんど落ちていないにもかかわらず,

自宅を手放すことを前提にした制度にすると,自宅を残したいという方のニーズにはこたえられません。

 

一方で,住宅ローン債権者の立場に立てば,自然災害の場合は自宅を競売してもほとんど回収できないから住宅ローンを減額・免除することを認めやすいのに対し,新型コロナ

ウイルスの場合は,自宅を競売すれば多額の回収ができるのですから,自宅の価値以下にまで住宅ローンを減額・免除することは認められないはずです。

弁護士は,登録支援専門家としてこの制度を使うこともありますので,自然災害と新型コロナの違いをどう調整して,制度ができあがるのか注目しています。

4 当事務所は,愛知・三重・岐阜・東京のほか,千葉県に2拠点目となる弁護士法人心千葉法律事務所も開設し,千葉の借金にお困りの方々を支援しています。

債務整理の詳細は,以下をご覧ください。https://www.chiba-saimuseiri.com/

 

会社の破産における製品・原材料の処理の注意点

1 完成品,半製品,原材料と大きく3段階に分けられる

会社が自己破産する際には,サラリーマンの破産にはない多くの問題があります。

そのうちの一つに,完成品,半製品,原材料の処分があります。

会社が自己破産する直前まで事業を続けている場合,提供している商品やサービスの進ちょく状況はバラバラです。

メーカーであれば,原材料を仕入れただけの段階,原材料を加工して完成品にする途中の段階(半製品といいます。),完成品になって出荷を待っている段階の大きく3つに分かれます。

サービスを提供している会社でも,案件の契約をしたが未着手の段階,案件を契約して完了までの途中,案件を完了しているが何らかの理由で提供し終わっていない場合等と仕事の進ちょくによって対応が異なりますが,ここではメーカーを例に説明します。

2 原材料の段階

原材料では,仕入先から原材料を受け取っているが仕入代をまだ支払っていないことがよくあります。

仕入先に返品することには問題があります。

自己破産では,債権者をみんな平等に扱う,つまり一部の取引先だけ支払ってはいけないという決まりがあり,原材料の返品はその仕入先だけ優遇したことになるからです。

また,原材料を後払いで仕入れた直後に破産すると,いわゆる計画倒産を疑われ,会社の代表者の借金が免責されなかったり,刑事罰を受けるおそれもありますので,

自己破産する時期を決める際にも注意が必要です。

3 半製品の段階

半製品は,まず,完成させて代金を全額受け取ることを目指すか,出来高で精算するか(進み具合に応じて代金のうち一定額を受け取る)を検討します。

あとわずかで完成するなら,従業員等に日当を払って完成させることもありますが,難しければ出来高で精算することになります。

出来高が決まらないうちに,自己破産する会社側から他の業者に任せてしまうと,本来であれば会社が受け取れたはずの財産を無償で渡してしまったと言われることもありま

す。

基本的には,自己破産を申し立てて廃業した日時点の現状を維持し,破産管財人という裁判所が選ぶ弁護士に任せることが多いです。

4 完成品の段階

完成したばかりの場合は,自己破産に伴って廃業すると,運送業者が使えない等で普段どおり引き渡すことができないのをどうするか検討しておきます。

また,未払いが残っている業者に完成品を持っていかれるトラブルがありますが,最悪の場合は会社の代表者が隠した等疑われて代表者の借金が免責されなかったり,

刑事罰の対象になりうるので,どうやって完成品を持っていかれないように保管するか検討しておく必要があります。

不良在庫になっている場合も,勝手に廃棄すると,本来であれば安値でもお金に換えられたはずのものが0円になってしまったと言われることもあります。

5 このように,会社の破産では製品や原材料をめぐって,様々な検討すべき点がありますので,会社の破産の経験豊富な弁護士と一緒にご検討ください。

 

自己破産や個人再生は地域ごとの差が大きい

1 自己破産と個人再生は,お住まいを基準に申請する裁判所が決まる

債務整理の方法のうち,裁判所を通じて行うものに,個人再生と自己破産があります。

個人再生は,お住まいを管轄する地方裁判所(弁護士は「地裁」という人が多いです)に申請して,借金を減額してもらい,3年から5年で返済する手続きです。

自己破産は,お住まいを管轄する地裁に申請して,借金を0にしてもらう手続きです。

お住まいを管轄するとは,住民票は東京都にあるが実際は名古屋市にお住いの方であれば名古屋地裁というように,住民票上の住所ではなく,実際にお住いの場所を基準に決めるのが原則です。

2 自己破産では,裁判所に納めるお金が地域ごとに異なる

自己破産には,同時廃止という簡易な手続きと,管財事件という複雑な手続きの2種類があります。

同時廃止は,目ぼしい財産がなく,借金が増えた経緯にも大きな問題がない場合で,ほとんどの裁判所が1万円強のお金を納めれば足ります。

管財事件は,目ぼしい財産があったり,借金が増えた経緯に問題がある等で,管財人という依頼した弁護士と別の弁護士が裁判所から選ばれ,調査を行う手続きです。

管財事件の場合に裁判所に納めるお金は,たとえば名古屋地裁であれば,約22万円か42万円です。

しかし,津地裁で管財事件の場合に裁判所に納めるお金は,約23万円か30万円ですから,地域によって,裁判所に納めるお金が10万円以上違うことがよくあ

ります。

また,同時廃止になるか管財事件になるかは,申し立てた裁判所の裁判官が判断しますが,その裁判所の担当裁判官の個性や,地域ごとの傾向で,同時廃止になりやすい裁判所

と管財事件になりやすい裁判所があります。

私の経験では,一般に,都会の方が裁判所の調査が細かく,管財事件になりやすい傾向がありますが,裁判官の異動により傾向が変わることもあります。

このように,自己破産は,地域ごとの特性の差が大きく,隣の県くらいならまだしも,遠方の弁護士では,その地域の特性をつかみきれない傾向があります。

3 個人再生は,個人再生委員の選任率が地域ごとに異なる

個人再生では,個人再生委員という,依頼した弁護士と別の弁護士が裁判所から選ばれることがあります。

個人再生委員が選任されると,裁判所に納めるお金は15~30万円程度余分にかかりますし,手続きにかかる期間も長くなります。

手続にかかる期間が長くなれば,それだけ払っていない期間の利息も増え,返済しなければいけない借金額も多くなってしまいます。

東京地裁は,原則として全件,個人再生委員を選任しています。

名古屋地裁では司法書士が申し立てる場合は選任されることが多いですが,弁護士が申し立てる場合は,選任されないことが多いです。

津地裁になると,個人再生委員が選任される確率は,名古屋地裁よりさらに低いと感じますので,手続きの費用の見積もりやスケジュールも地域ごとに異なってきます。

4 地元の弁護士の強み

このように,自己破産や個人再生は,その地域に精通した弁護士に依頼する方が,手続きにかかるお金やスケジュールの面で有利に働くのが通常です。

当法人では,令和2年6月,三重県四日市市に,新たに事務所を開設し,四日市を中心とした三重県北部の方にご来所いただきやすい体制を整えています。

詳細は,以下の四日市の自己破産,個人再生サイトをご確認くだされば幸いです。

自己破産のページはこちら

個人再生のページはこちら。

 

 

 

新型コロナウイルスと裁判の遅れによる影響

1 新型コロナウイルス関係と裁判の遅れ

新型コロナウイルスによる外出自粛要請で,テレワークになったり,休業になった方が大勢いらっしゃいます。

弁護士も打ち合わせにウェブ会議システムを使ったり,法律事務所の相談スペースや執務スペースの消毒を行う等,弁護士業務に大きな影響を及ぼしています。

外出自粛要請は,裁判所等の官公庁も例外ではありません。

裁判所の職員の出勤が減ったこと等で裁判所に提出した書類の審査が大幅に遅れたり,裁判が傍聴人を入れて行う関係で三密に近い状態になりかねず,裁判の期日が延期になっ

ている問題があります。

ここでは,裁判が遅れることで,個人や事業をされている方に生じる影響について検討します。

2 裁判を通じた取立が遅れる

取引先が約束したお金を払ってくれないとか,人に貸したお金を返してもらえないときには,裁判をした後に,取引先や貸した相手の財産を差押えする等して強制的に回収することができます。,

しかし,差押えは,基本的に裁判所を通じて行わなければならないため,裁判が遅れると,強制的に回収するのが遅れることになります。

裏を返せば,お金を借りたり,約束したお金を払えない取引先は,差押えを受けるリスクが,新型コロナウイルスの問題が浮上する前より低くなっているともいえます。

3 建物の明け渡しが遅れる

賃貸人が,賃料を払わない賃借人を強制的に出ていかせるためには,裁判をして明け渡しを認める判決をもらい,判決に基づいて明け渡しの執行をする必要があります。

新型コロナウイルス関係で,賃料を払えない事業者が多くいることが問題になっていますが,裁判をしても明け渡しを認める判決が長期間もらえないとなると,賃貸人側からす

ると,賃料を払わない賃借人に出て行ってもらって次の賃借人に貸すこともできず,非常に収益が悪化することになります。

裏を返せば,賃料を払えない賃借人側では,明け渡しの判決が出るまでは少なくとも強制的に退去させられないとすると,他の支払を優先することになりそうです。

4 まとめ

裁判を通じない交渉も,新型コロナウイルスの影響下では,対面で話すことが難しくなっていることによる影響がありえるので,一概に裁判を通さない方が

有利になっているとは言い切れません。

争いごとの解決には,通常より時間がかかることを考慮して,裁判を通じるか,話し合うか,話し合うにしても対面でない方法がとりうるか等,検討する必要があります。

 

 

 

新型コロナウイルスと資金繰り

1 新型コロナウイルスと資金繰りの悪化

新型コロナウイルスの関係で,資金繰りが悪化している会社や個人事業主さんが非常に多くいらっしゃいます。

日々状況は変わっていますが,この記事の執筆時点では全国に緊急事態宣言が発令されており,外出の自粛等で経済活動はこれまでにないほど停滞しており,いつ終了するかも分からない状況です。

売上が大きく減っていることから,事業所の賃料,従業員の給料,税金,その他の経費の支払いが難しくなっている方も少なくありません。

ここでは,新型コロナウイルス関係で資金繰りが悪化した方ができる,資金繰りをよくする方法を3つ紹介します。

2 税金,水道光熱費の支払猶予

税金,健康保険料,厚生年金保険料は,支払が遅れれば,直ちに財産や売上の差押えをする点で,資金繰りを考えるうえで注意が必要なものです。

しかし,新型コロナウイルス関係で,国税に関しては国税庁,地方税に関しては総務省のホームページに,年金保険については年金機構のホームページに,最大1年間の支払猶

予が受けられる制度がのっています。

個別の相談は,既に分割払いの合意をしている場合はその担当部署と,そうでなければ納付書を送ってきている連絡先に相談されることになります。

また,水道光熱費も,支払が遅れ続けると,ライフラインがとまってしまう危険があるので,何の連絡もせず支払いをしないのは危険です。

各電力会社,水道局,ガス会社と話し合う必要があり,地域によって異なりますが,積極的に支払猶予を打ち出しているところが多くあります。

私の住む名古屋市も,名古屋市水道局のホームページに,支払が困難になった方向けの支払猶予の相談先が掲げられています。

実際支払いが難しい場合でも,口座からの自動引き落としになっていると,自動的に支払われてしまい,従業員の給料や皆さんの生活費が捻出できなくなっては困りますので,引落口座から出金して残高不足にしておいたり,自動引き落としの契約をやめることで,支払を止めることも検討できます。

3 賃料の支払猶予

事務所の賃料も,賃貸人又は管理会社に,支払の猶予や賃料の減額の相談をしてみることをお勧めします。

賃貸人が取引先の賃料を免除した場合の損金処理を認める措置や,猶予に応じた場合の固定資産税の納税猶予等の制度が作られています。

仮に長期間賃料が支払えなければ,最終的には退去を求められますが,強制的に退去させるためには,裁判を通じて判決を取得する必要がありますし,

一般に3ヶ月程度滞納しなければ退去まで認められないことが通常です。

これも引き落とし口座から出金しておいたり,自動引き落としの契約をやめることで,支払を止めることも検討できます。

4 金融機関の返済猶予

金融機関への返済も,連絡なくやめてしまうと,借入のある銀行口座が凍結されたり,一括請求されるおそれがあります。

そこで,金融機関にリスケジュールという元本の返済猶予(利息のみ返済)をお願いすることが考えられ,最初は応じてもらえる可能性が高まっていると思われます。

ただし,リスケジュールをお願いすると,少なくともその金融機関を通じた新規融資は受けづらくなります。

また,リスケジュール中に利息の支払いもできなくなると,やはり口座凍結等のリスクがでてきますので,事業の再生に詳しい弁護士に相談しながら,資金繰りを考えていくこ

とをお勧めします。

 

時効に関する民法改正とその影響

1 民法の改正と時効

令和2年4月1日から,改正民法が施行されます。

民法はもともと明治時代にできたもので,現代に合わない点が数多くあったことから,様々な改正が行われました。

生活への影響が大きいものの一つに,時効に関するものがあります。

時効は,一定の期間が経過すれば,本来払わなければならないものが払わなくてよくなったり,他人のものかもしれないものも取得できる制度です。

たとえば,AさんがBさんにお金を貸して,10年間Bさんが返済しないのにAさんが何もしていなければ,Bさんは,時効を主張すれば支払いをしなくてよくなります。

これは,改正前民法167条に,「債権は,10年間行使しないときは,消滅する。」と規定されていることによります。

2 債権の消滅時効期間が一般的に5年になる

改正後の民法166条は,次のとおり規程しています。

債権は,次に掲げる場合には,時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

AさんがBさんにお金を貸した例で考えると,Aさんはお金を返してもらう権利があることは,お金を貸した時点で知っていることになるでしょうから,5年で時効にかかることになりそうです。

これだけ見ると貸した人がかわいそうに思えますが,改正前は,事業者間の取引の時効が商法で5年になっていたり,民法で1年や3年の時効が定まっているものもあったところを,5年で統一する意味がありました。

3 消滅時効期間の改正と過払金返還請求への影響

名古屋で弁護士業務をしていると,「権利を行使することができることを知った時」がいつなのか争いになるケースが今後増えることが予想されます。

たとえば,当事務所が力を入れている過払い金の返還請求では,今までは,完済してから10年たたなければ時効にならないと考えられてきました。

しかし,完済してから6年しかたっていない場合でも,完済した時点で「権利を行使することができることを知った」ということになれば,改正後の民法では,5年の

時効にかかって過払い金を返還してもらえなくなりそうです。

過払い金は,過去に20%を超える高金利で借入をしていたならば生じることが分かるので,権利を行使することができる,つまり過払い金を請求できることを知っていた

という判断になる可能性は十分あります。

4 経過規定との関係で改正後民法が適用されない場合も多い

ただ,突然10年間時効にかからないと思っていたのに5年になって,権利を行使できなくなるのも不適切ですから,以下の場合に,改正前民法が適用されるという経過規定がおかれています。

「施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって,その原因である法律行為が施行日前にされていたときを含む。)」(改正附則10条1項)

過払い金の例でいえば,令和2年4月すぐの時点では,過払い金のほとんどが施行日前(令和2年3月31日まで)に発生していますから,今までどおり10年で大きな問題は発生しないでしょう。

しかし,令和2年4月から時間が経つにつれて,施行日後(令和2年4月1日以降)の過払い金が多くなってきますので,早めに請求しないと時効にかかるケースが増える可能性があります。

 

自己破産や個人再生と返済ができないと思った時期

自己破産は,裁判所(名古屋市にお住いの方であれば,名古屋地方裁判所等,お住まいを管轄する地方裁判所)に申請して,原則として全ての借金を払わなくてよくしてもらう手続きです。

個人再生は,裁判所に申請して,借金額を5分の1等に減額してもらって,3年から5年かけて返済する手続きです。

自己破産や個人再生では,返済ができないと思った時期がいつかが重要なポイントになります。

その理由は,大きく3つあります。

1 返済ができないと思った後は,新たな借入をしてはいけない

返済ができないと思ったのに,新たに借入をして,予想どおり払えなくなったとなると,最初から返す意思がなかったことになります。

最初から返す意思がないのに借入をすれば,詐欺罪に当たる可能性もあり,自己破産では免責(借金がチャラ)されない事由にあたり,個人再生でも,

裁判所が認可しない事由にあたります。

2 返済ができないと思った後は,一部の債権者だけ返済してはいけない

自己破産や個人再生では,全ての債権者への返済を平等にやめなければなりません。

一部の債権者だけ返済した場合,たとえば消費者金融には返済しないのに親から借りたお金だけ返済している場合は,破産であれば,破産管財人という弁護士が,

親に対して裁判等をして返済したお金を取り返すことになります。

本来お金に余裕があれば親に返済することは自由ですから,いつから返済してはいけないのか問題となります。

それは,法律用語では支払不能・支払停止,簡単にいえば,もう返済ができないと思った時期から後は一律に返済してはいけないと考えられています。

3 返済ができないと思った後は,無駄づかいをせずにお金の流れを管理しなければならない

同じギャンブルで借金がかさんだのでも,10年以上前にギャンブルをしていたが10年前からやっていない場合と,返済ができていないのに自己破産する直前までギャンブルをやっていた場合では,後者の方が,裁判所や債権者の見る目は厳しくなります。

お金に余裕があればギャンブルや趣味にお金を使うのも自由という余地がありますが,もう返済ができないのにギャンブル等で無駄づかいをすれば,そんな余裕があったらもっと返済できたはずといわれます。

自己破産であれば免責が難しくなり,個人再生でも裁判所が認可しない事由にあたることもあります。

4 返済ができない時期についての対応策

自己破産や個人再生では,裁判所から,いつから返済できないと思っていたかや返済の目途があったかをきかれます。

最終的に弁護士に自己破産や個人再生を依頼する方は,いつかの段階では返済できなくなったはずだからです。

先ほどまで書いたとおり,たとえば弁護士に依頼する3年前から返済できないと思っていたのであれば,ここ3年間に借りて返せなくなったものや,ギャンブル等の無駄づかい

は非難されやすくなります。

一方,弁護士に依頼する数日前まで,返済を続ける意思や目途があったといえれば,たとえば6ヶ月前に新しく借入をして払えなくなっても,非難はやわらぐでしょう。

弁護士に依頼する直前まで,親族の援助を得たり,収入を増やしたり,生活費を切り詰めたり,新たな借入先を探したりして,返済を続ける努力をしている方は

大勢いらっしゃいます。

このような事情を上手に引き出し,裁判所に対し,弁護士に依頼する直前まで借入を返済する意思や目途があったと説得できるかも,弁護士の腕の見せ所の一つです。

実際返済をやめてから長い時間たって弁護士に相談される方もいらっしゃいますので,それを弁護士に依頼する直前まで借入を返済する目途があったというのは,説得力がないケースもあります。

このように,どの程度であれば裁判所や債権者を納得させられるかの判断は難しいものがあります。

自己破産や個人再生を検討される方は,返済できないと思った時期や返済の目途について,よく弁護士と相談されることをお勧めします。

名古屋で債務整理のご相談をお考えの方はこちらをご覧ください。

全国倒産処理弁護士ネットワーク

昨年末,全国倒産処理弁護士ネットワークという,倒産案件を扱う弁護士の団体が主催するシンポジウムに出席してきました。

全国倒産処理弁護士ネットワークは,少なくとも毎年1回,裁判官や倒産法の世界で著名な研究者も招いて,倒産法や倒産案件の処理に関するシンポジウムを開いたり,

倒産案件に関する著書を出版しています。

名古屋で行われたシンポジウムで,名古屋地方裁判所の裁判官の運用に関する講演を聞いたほか,近年の最高裁判所の判例をめぐる議論がありました。

最高裁平成30年12月7日判決は,簡単にいうと以下のような事案です。

自動車部品メーカーのYは,金属スクラップ販売業者Aに対して販売する金属スクラップに,代金の完済をもって所有権がYからAに移転するという所有権留保の合意をしていました。

その後,金融機関XがAに対して融資する際,Aの所有する在庫商品等について集合動産譲渡担保を設定し,動産譲渡登記もされました。

Aが債権者に事業を閉鎖する旨通知し,YがAに対し動産引渡断行の仮処分を申し立てて認容され,金属スクラップを引き上げたのに対し,XがYに,譲渡担保権を主張して争いました。

判決は,AY間の合意は,目的物の引渡しからその完済までの間,その支払いを確保する手段を売主に与えるものであって,その限度で,目的物の所有権を留保するものである。

売買代金が完済されるまで金属スクラップの所有権は移転しないから,「Aの所有する在庫商品」になっておらず,XがYに譲渡担保権を主張することはできないとして,Yを勝訴させました。

平成22年の最高裁判例で,車のローン会社が所有権留保権を破産管財人等の第三者に対抗するには,対抗要件を備えていなければならないというものがありましたが,平成30年判決は,Yの対抗要件について言及せずYを勝訴させていることから,破産・民事再生等の法的整理が行われていない点で平成22年判決と違うのか,集合動産譲渡担保が所有権留保に劣後するのか等,解釈をめぐって様々な考え方が出ています。

今後の倒産実務の動きが注目されます。