賃貸借契約の保証をめぐる法改正

1 民法改正で保証をめぐる扱いが変更された

令和2年4月1日から改正民法が施行されていますが、この改正で連帯保証人の保護が手厚くなっています。

賃貸借契約で連帯保証人を求めている場合は、賃貸人は、今までどおりではいざというときに保証人に請求できない事態になりかねず、注意が必要です。

2 賃貸借契約の連帯保証をめぐる主な変更点

⑴ 個人の保証人の限度額の明示が必要になった

賃借人の個人の連帯保証人には、極度額という限度額を定めて初めて限度額の範囲内で請求でき、限度額を定めなければ、そもそも保証契約が無効となり、請求できなくなりました。

⑵ 保証人に対して情報提供が必要になる場合がある

賃貸人は、賃借人の連帯保証人が期限の利益を喪失した場合は、期限の利益を喪失したことを連帯保証人に通知しなければ、通知するまでの遅延損害金を請求できないとされ

ました。

また、賃借人がきちんと賃料を払っているか、いくら未払いがあるか等連帯保証人から問い合わせがあれば、賃貸人は、連帯保証人に回答する必要があります。

そして、事業用の賃貸借契約では、賃借人は連帯保証人に対して他の債務の状況や財務状況等の情報を提供する必要があり、情報提供していないと賃貸借契約の連帯保証が取り消される可能性があります。

3 対応

⑴ 保証の限度枠の設定

国土交通省の統計資料等を踏まえて、賃料等に応じて適切な個人保証の限度額を設定するか、もしくは個人の保証人でなく、保証会社を使うこと検討する必要があります。

⑵ 保証人への情報提供

賃貸借契約で、たとえば〇ヶ月以上賃料を滞納した場合は、連帯保証人に連絡する等定めておくことが考えられます。

また、事業用の賃貸借契約では、賃借人が、賃貸人に対して情報提供した内容を確認しておく必要があるでしょう。

ただし、その内容の正確性まで調査する必要がないと考えられていますが、詳細な対応は弁護士までお尋ねください。

⑶ 基本的に、令和2年4月1日以降に締結した賃貸借契約が対象ですが、内容を変更する更新をした場合等は、新たな賃貸借契約を締結したものとして、3⑴や⑵の対応が必要

になる可能性があります。

 

破産申立て前の不動産の名義変更

1 自己破産では不動産は手放すのが原則

自己破産する方が不動産を所有している場合、基本的に不動産は手放して、売ったお金は債権者に渡るのが原則です。

自己破産が、目ぼしい財産をお金に換えて債権者に分けても残った借金をチャラにしてもらう手続きであるため、不動産を何らかの方法で現金化することは避けて通れないためです。

2 無償で名義変更してもダメ

では、自己破産の直前にご主人名義の不動産の所有者を無償で奥様に変えるとどうなるでしょうか。

結論から言えば、全く意味がないか、自己破産しても免責されないかのどちらかです。

まず、住宅ローン等の担保が残っている場合、不動産の所有者を変えても、担保を設定している住宅ローン債権者は、住宅ローンが破産で払われない以上、不動産を競売等で強

制的に売却することができます。

これでは、名義変更して不動産を残そうとしても意味がありません。

また、無担保の不動産を、無償で奥様に名義変更することは、財産を隠したことになり、自己破産しても免責されない(借金が残る)事由に当たっています。

さらに、破産管財人という弁護士が裁判所から選ばれ、奥様等名義変更した相手方に訴訟をして、名義を戻したうえで売却する制度がありますので、結局不動産を残すことはで

きません。

3 適切な時価であることをどう示すかがポイント

ただ、自己破産しても不動産を使い続ける(自宅であれば住み続ける)方法もあります。

適切な時価を払って買い取り、担保を設定している債権者も同意すればよいとされています。

これは、たとえば時価2000万円の自宅に2500万円の住宅ローンが担保を付けている場合、ご主人が2000万円で奥様に売り、住宅ローン債権者が適切な時価と認めて

担保を外してくれれば、不動産を使い続ける(自宅であれば住み続ける)ことができます。

では、時価2000万円が適切であることをどうやって示すかですが、たとえば不動産業者2社の査定をとり、高い方の金額を採用する等が考えられます。

ただ、後に破産管財人が査定を取ってみると、2200万円と出れば、不足額の200万円を払うように言われたり、破産管財人が奥様に訴訟をして不動産をご主人名義に戻そ

うとするリスクがあります。

4 破産管財人から買い取ることも検討する

破産申立て前に自ら査定を取って売買しておく以外に、破産管財人が不動産を売却しようとする際に、他の不動産業者より高い金額で奥様等が買い取る方法もあります。

こちらであれば、破産管財人に時価が適切か疑問に思われるリスクは低いですから、急がないならこちらを検討するのが王道です。

フランチャイズの事業者さんの債務整理の注意点

1 フランチャイズ会社との契約のしばり

フランチャイズのお店の経営者さんは、事業主でありながら、フランチャイズの会社との契約にしばられて、事業を続ける場合も、廃業する場合の処理の方法も制限されること  があります。

たとえば、フランチャイズ契約が切れれば事業が続けられないですし、廃業する場合は6カ月程度前に予告しないと違約金が発生する等の問題があります。

ここでは、フランチャイズのお店の経営者さんが債務整理する際のポイントをお伝えします。

2 任意整理では影響はない

債務整理は、任意整理、個人再生、自己破産と大きく3つあります。

このうち、任意整理は弁護士が相手の貸金業者と分割払いの話し合いをすることで、この場合、相手の業者を選べますので、フランチャイズ契約は基本的に影響を受けません。

ですから、任意整理で払っていけるのであれば、最も生活を続けていくのに影響が少ないと言えます。

3 個人再生で事業を続ける場合は、フランチャイズ契約が続けられるかと、保証金や在庫の時価額がポイント

個人再生は、裁判所を通じて借金を減額してもらい、3~5年で返済する手続きです。

個人再生することは、フランチャイズ契約の解除事由になっているケースが多く、また、フランチャイズ料の未払いがあると、それも減額の対象にしなければならないのが通常ですので、フランチャイズ契約を続けられるかが最大のポイントです。

また、個人再生は、持っている財産全額分は最低限返済しなけれならず、財産の時価を見積もらなければなりません。

フランチャイズ契約で保証金が大きい場合、その満額が時価になると返済額が増えてしまうますし、在庫商品や什器備品の所有権がお店側にあると、その時価をどう見積もるか

がポイントになります。

4 自己破産で廃業する場合は、在庫商品含む引継ぎの方法を柔軟に協議する

自己破産する場合は、フランチャイズ契約は基本的に解除になり、廃業することになります。

フランチャイズ契約は違約金の設定が高額で、連帯保証人がいる場合は、連帯保証人に違約金の請求がいく可能性があるので、連帯保証人の確認が必要です。

フランチャイズの場合、廃業日を決めて在庫商品の棚卸をするのが通常ですが、一旦閉店するか、フランチャイズが直営化するか、引継先が決まっているかによって、什器備品

や在庫商品の処理方法が変わってきます。

また、最後の給料の支払方法等もフランチャイズから支払うのか、自ら支払うのか、独立行政法人健康福祉機構の立替払制度を使うか等、フランチャイズと協議することもあり

ます。

不明点は、フランチャイズ店の経営者さんの債務整理に詳しい弁護士にご相談ください。

 

 

 

刑事事件で逮捕・勾留された場合の保釈

1 起訴後に釈放を求めるのが保釈

犯罪を犯したとして警察に逮捕・勾留された場合に、誰しも早く外に出たいと思うのが通常です。

逮捕段階や起訴前の勾留段階で釈放を求める手続きもありますが、認められないことが多いです。

これは、起訴前は、警察や検察側からすれば、証拠が集まりきっておらず、被疑者を外に出すと、自分の手で、または共犯者や被害者に働きかけて証拠を隠滅する可能性が高くなりがちと思われているためです。

一方、起訴後の保釈の段階では、認められる確率は上がってきます。

ここでは、保釈が認められやすい場合や認められにくい場合等をご紹介します。

2 保釈の法律上の要件

保釈は、刑事訴訟法に規定があり、一定の重大犯罪や前科がある場合でなければ、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときや、住居不定のとき等を除いて認めるのが建前になっています。

これを必要的保釈と呼んでいます。

短期1年以上の懲役または禁錮に当たる罪等重大犯罪の場合や長期10年以上の懲役または禁錮の前科がある場合等は、裁判所は、被告人が逃亡又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防除の準備の不利益の程度その他の事情を考慮し、裁量で保釈を認めることができるとされ、裁量保釈と呼んでいます。

3 結局は、証拠隠滅や逃亡の可能性が低いといえることが最重要

弁護士は、必要的保釈の要件を満たすことを最初に主張するわけですが、証拠を隠滅するおそれがないとか、逃亡のおそれがないと言えるためには、たとえば身元引受(出所し た後の監督)をしてくれる親族がいるかや同居しているか、隠滅可能な証拠としてどういうものが想定でき、それを警察・検察が集めきっているといえるか等がポイントになります。

同居の家族がいて安定した仕事がある方は逃亡や証拠隠滅しにくい一方で、一人暮らしで無職等であれば、逃亡しやすいと考えられているのです。

4 その他の事情

裁量保釈の場合の身体の拘束による不利益としては、社長であれば会社が倒産してしまうとか、サラリーマンであれば勤務先を解雇されてしまうとか、他には病気で満足に療養

できない等が考えられます。

これらの証拠を提出することで、保釈が通る可能性は高まります。

保釈が通るかは、様々な事情を考慮して決まりますので、詳細は弁護士におたずねください。

 

債務整理と返済代行

1 債務整理後の返済は、基本的に各業者に分けて振り込むことになる

債務整理をした後、債権者に返済する際、どうやって返済するのかというご質問をよくいただきます。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産と大きく3つあり、自己破産の場合は今後返済していくことはありません。

任意整理、個人再生は、多くの方が業者に分割で払っていくことになりますが、その際は、今までどおりの口座引き落としやATMでカードを使って支払うことはできません。

約束どおり払わなくなった以上、業者にとって、あなたはお客様ではなくなり、回収の対象となるので、振込手数料を自己負担して、業者ごとに振り込むのが基本になります。

2 返済代行では、弁護士への積立を続けると、弁護士から各業者に支払ってくれて手間が省ける

ここで、弁護士に返済代行を依頼すると、債務整理後も弁護士事務所の口座に入金すると、弁護士から各業者に振り込むこともできます。

多くの弁護士事務所では、手数料として1社1回1000円程度の額を決めて、依頼者さんが毎月弁護士事務所に振り込むお金からこの手数料等を差し引いて業者に返済しま

す。

3 返済代行のメリット、デメリット

返済代行のメリットは、①基本的に債務整理依頼当初と同じ口座に同じ額を入れ続ければ済むので、手間が省ける②振込先や業者名の変更への対応をご自身でする必要がない

③数日の入金遅れや誤入金があっても、業者からの督促が届かないで済むのでご家族に知られにくい④弁護士との契約が続くので、給料日変更に伴う支払日の変更希望等が相談し

やすい等があります。

返済代行のデメリットとして、返済代行の費用がかかる点があります。

任意整理の返済代行の費用は、現在の弁護士会の規程では、振込手数料込で1000円+税までとなっています。

ご自身で振り込む場合の振込手数料が756円の業者ですと、1回の手数料は1100-756=324円です。

1円でも安く済ませようと思えばご自身で振り込むことになるでしょうし、振込忘れや振込先変更等による業者からの連絡への対応の手間や安心を買うなら、返済代行を依頼す

ることが考えられます。

詳細は、任意整理や個人再生に詳しい弁護士におたずねください。

 

 

 

個人再生で持ち家を手放す場合の住宅ローンの扱い

1 持ち家を手放しても個人再生を選択するケース

個人再生は、住宅ローンを約束どおり支払うことで持ち家が残り、住宅ローン以外の借金を裁判所を通じて減額してもらうことができます。

自己破産では持ち家は基本的に手放すことになるので、住宅ローンのある自宅を残したい方が個人再生を選択することが多いです。

ただ、個人再生は、持ち家を残したい場合にしか使えないわけではありません。

たとえば、自己破産では解約返戻金20万円以上の保険や時価20万円以上の自動車は、解約したり売却しなければならない可能性もあります。

個人再生では、このような保険や車も残すことができます。

また、借金が増えた主な原因がギャンブルや投資の失敗であれば、自己破産しても免責されず、支払義務が残る可能性がありますが、個人再生ではそういうこともありません。

ですから、住宅ローンのある自宅を手放すケースでも、他に残したい財産がある場合や借金が増えた原因に問題がある場合等に個人再生を選択することはよくあります。

2 住宅ローンの残債務額は、持ち家が売れたときに確定する

持ち家を手放す個人再生の場合、住宅ローンを約束どおり支払う必要はなく、他の債務と同様に5分の1等に減額されます。

個人再生が終わった後に支払う住宅ローンの額は、持ち家が競売又は任意売却で売れるまで決まりません。

たとえは、2000万円の住宅ローンが残っていても、持ち家が売れた代金1200万円を住宅ローンの債権者が受け取ることで、残る住宅ローンは800万円になります。

個人再生が終わった後に払っていく額は、他の債務が5分の1に減っているなら、800万円×1/5=160万円です。

3 個人再生を依頼する方は、将来払っていく住宅ローン分を積み立てておくのがよい

このように、持ち家が売れるまでいくら住宅ローンが残るか決まらない以上、5分の1等に圧縮された他の債務の返済が始まっても、住宅ローン債権者への返済は始まらないと

いうケースがあります。

たとえば2020年1月末日から他の債務を返済する場合、持ち家が売れたのが2020年6月1日なら、おおむね2020年6月中旬頃から住宅ローンの残額を5分

の1に圧縮した額の支払がスタートします。

2020年6月の返済時に、2020年1月から6月に住宅ローン債権者に支払うべき額を一気に支払う必要があるので、まとまった額が必要になります。

うっかり2020年1月から6月に住宅ローン債権者に払うべき金額を他に使ってしまっていると、いざ住宅が売れたときに支払いに困ることになりますので、

住宅ローンのある持ち家を手放す個人再生をする方は、住宅ローン債権者に支払うべき額を毎月プールしておく方がよいでしょう。

個人再生はお住いを管轄する裁判所(名古屋市にお住いの方であれば名古屋家庭裁判所)に申し立てますが、特に住宅ローンのある自宅を手放すケースの返済額の計算は複雑ですので、詳細は弁護士におたずねください。

個人再生で返済の見込みがあると認められる方

個人再生では,収入から生活費を支払っても余りがあって,余りで返済の見込みがあると裁判所が認める必要があります。

借金の相談に来られる多くの方がギリギリの生活をされているので,この要件を満たすか微妙な方は少なくありません。

1 認められない例:専業主婦,無職で失業保険しか収入がない

まず認められないことがほぼ確定している例をお話しします。

専業主婦の方は,配偶者の収入から返済できるとしても,ご自身は収入を得る見込みがないとして,個人再生は認められません。

また,無職の方は,年金で固定収入がある方はよいのですが,そうでない方は,認められません。

失業保険や傷病手当は,いずれもらえなくなることが決まっていますので,次の就職先が決まってその収入から返済できることが示せなければ,個人再生の

最低返済期間である3年間,収入が続くとはいえないからです。

2 派遣社員は認められることが多いが,無収入の期間が多いと問題がある

派遣社員の方は,労働者派遣法の関係で3年を超えて同じ部署に派遣されないことや,派遣先の状況で無収入になることがある点で,正社員の方より難しいケースがあります。

それでも,一定期間収入がある状態が続いていれば,個人再生が認められることが多いです。

問題があるのは,派遣先が見つからず無収入の期間や,数万円の収入しかなく生活費の方が多い月がたびたびある場合です。

この場合は,現在の派遣先に行ってからの期間や,過去の就業実績をもとに,個人再生の返済期間である3~5年間,その収入が得られる可能性が高いとどこまで証拠が出せる

かによります。

3 契約社員は認められることが多いが,契約更新の実績による

契約社員の方は,契約が更新されなければ無収入になることがある点で,正社員の方より難しいケースがあります。

こちらは,契約期間が決まっている分,契約更新の確率が最も重要です。

過去に複数回更新実績があればよいですが,ない場合は,他の同様の待遇の方が更新されているかや,過去の就業状況をもとに,個人再生の返済期間である3~5年間,その収

入が得られる可能性が高いと認められるかが問題になります。

転職歴が多い方は,転職の理由から今回の仕事が続きそうかどうかがみられたり,職の間に無収入の期間がないかどうか等も問われます。

4 弁護士への積立の実績も重要

個人再生では,弁護士に依頼した後は,債権者への返済をやめ,代わりに弁護士の事務所の口座に毎月数万円ずつ積み立てるのが通常です。

この積立額の実績が,将来返済に回すことができる額とみなされるので,積立てが途切れないことも個人再生が認められる重要な要素です。

個人再生で返済の見込みがあると認められるか微妙な方は大勢いらっしゃいますが,積立ての実績を作り,生活費の節約も合わせて行い,収入がある状態が続いていれば,認められる例が多いでしょう。

個人再生できるか不明な方も,相談自体は無料ですので,お気軽に弁護士までお問い合わせください。

 

成年後見,保佐,補助の違い

1 判断能力が衰えた方の保護の制度

判断能力が衰えたご高齢の方や障碍のある方が,財産を取られたり悪徳商法に引っかかったというご相談があります。

このような高齢者や障碍者について,家庭裁判所に申請して,他の方が同意しなければ契約できないようにしたり,契約を取り消したりできるようにして,財産を守ったり身の回りの世話をしやすくする制度があります。

判断能力が衰えた場合等に民法が想定している制度として,成年後見,保佐,補助と3つのパターンがあります。

2 主に判断能力によってどれを選ぶかが決まる

これらは,判断能力が衰えている程度によって,最も重いのが成年後見,中間が保佐,最も軽いのが補助となっています。

主治医さんや精神科医が知能テストや鑑定を行い,その点数によって,どれが相当かや,通常の判断能力を有しているかがおおむね決まります。

「おおむね」と書いたのは,最終的な判断権者は,家庭裁判所の裁判官であって,裁判官は医師の判断に拘束されるわけではないからです。

3 成年後見は,大きなお金が動くほとんどの行為を後見人が行う

成年後見では,判断能力が衰えている側の方を「被後見人」,代わりに判断する側の人を「後見人」といいます。

後見人は,親族から選ばれることも多いですが,財産額が多い場合や親族間の争いが激しい場合等は,弁護士等の専門家が選ばれることが多いです。

また,後見制度支援信託という制度で信託銀行等に口座を作って預け入れ,お金の動かし方に制限を加える場合もあります。

日常の簡単な行為を除き,後見人に契約の取消権,代理権が与えられ,居住用の不動産の売却には裁判所の許可がいる等,財産を不当に奪われないための厚い保護があります。

逆を言えば,被後見人が目ぼしい財産を動かす自由はほとんどなくなりますので,後見人は,被後見人の意思を十分尊重して活動する必要があります。

4 保佐・補助は,与えられる権限によって異なる

保佐や補助は,借金,重要な財産の処分,遺産分割等法律に定めのある行為を中心に,本人の代わりに判断する人が必要と見込まれる行為について,同意権,取消権,代理権等が選択されて付与されます。

後見人が,ほとんどの目ぼしい財産を動かす行為について権限を及ぼすのに対して,保佐人や補助人といった代わりに判断する人は,一部について,保佐人・補助人の同意なしにはできないとしたり,本人を代理して行うことができると定められるにすぎません。

 

 

新型コロナウイルスと住宅ローンの返済猶予や減額等

1 住宅ローンの減額・免除のガイドライン

新型コロナウイルスの影響で収入が減って,住宅ローンの返済が難しくなったというご相談が増えています。

令和2年8月7日の日本経済新聞に,金融庁,全国銀行協会等が,新型コロナウイルスの影響で住宅ローンの返済が見込めなくなった人に対し,住宅ローンを減額・免除する制度を整えようとしているという記事がのっていました。

東北・東日本大震災等で住宅が被害を受けた方に使われた,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を,新型コロナウイルスにも当てはめようとしているようです。

2 令和2年8月時点では,住宅ローンの返済猶予の制度を使うのが原則

令和2年8月時点で住宅ローンの返済が既に難しくなっている方は,住宅ローンの債権者と話し合いをして,返済を猶予してもらうのが基本的な対策です。

これは,新型コロナウイルスの影響の前からよく行われていたもので,たとえば住宅金融支援機構のホームページでは,①ボーナス返済の見直し②中ゆとり③返済期間の延長等が掲げられています。

②は,3~5年間程度,利息だけを支払うようにして,3~5年経過後に上乗せして返済するなどで,③は,毎月の返済額を減らして返済総額を増やす代わりに返済期間を最長15年間後ろに延ばすなどを指します。

しかし,これらは,毎月の利息分すら払えない人は使えないですし,住宅ローンの元本は変わらないので,将来今まで以上の負担額になって跳ね返ってくるのが通常です。

3 自然災害に関する債務整理ガイドラインを使う問題点

自然災害に関するガイドラインでは,ごく簡単にいうと,自然災害にあった方が,弁護士等の登録支援専門家を通じて債権者と話し合いをし,時価20万円を超える財産を手放

すことを前提に,債務を減額・免除してもらうことができます。

通常は,住宅ローンが払えず自宅を手放しても,残った債務は一括で払わなければならないのが原則ですので,自然災害に関するガイドラインが新型コロナウイルスに適用でき

るようになれば,自宅を手放せば,残った住宅ローンを請求されることはなくなりそうです。

しかし,自然災害の場合は,自宅は災害で使い物にならなくなっているのに対し,新型コロナウイルスの場合は自宅の価値はほとんど落ちていないにもかかわらず,

自宅を手放すことを前提にした制度にすると,自宅を残したいという方のニーズにはこたえられません。

 

一方で,住宅ローン債権者の立場に立てば,自然災害の場合は自宅を競売してもほとんど回収できないから住宅ローンを減額・免除することを認めやすいのに対し,新型コロナ

ウイルスの場合は,自宅を競売すれば多額の回収ができるのですから,自宅の価値以下にまで住宅ローンを減額・免除することは認められないはずです。

弁護士は,登録支援専門家としてこの制度を使うこともありますので,自然災害と新型コロナの違いをどう調整して,制度ができあがるのか注目しています。

4 当事務所は,愛知・三重・岐阜・東京のほか,千葉県に2拠点目となる弁護士法人心千葉法律事務所も開設し,千葉の借金にお困りの方々を支援しています。

債務整理の詳細は,以下をご覧ください。https://www.chiba-saimuseiri.com/

 

会社の破産における製品・原材料の処理の注意点

1 完成品,半製品,原材料と大きく3段階に分けられる

会社が自己破産する際には,サラリーマンの破産にはない多くの問題があります。

そのうちの一つに,完成品,半製品,原材料の処分があります。

会社が自己破産する直前まで事業を続けている場合,提供している商品やサービスの進ちょく状況はバラバラです。

メーカーであれば,原材料を仕入れただけの段階,原材料を加工して完成品にする途中の段階(半製品といいます。),完成品になって出荷を待っている段階の大きく3つに分かれます。

サービスを提供している会社でも,案件の契約をしたが未着手の段階,案件を契約して完了までの途中,案件を完了しているが何らかの理由で提供し終わっていない場合等と仕事の進ちょくによって対応が異なりますが,ここではメーカーを例に説明します。

2 原材料の段階

原材料では,仕入先から原材料を受け取っているが仕入代をまだ支払っていないことがよくあります。

仕入先に返品することには問題があります。

自己破産では,債権者をみんな平等に扱う,つまり一部の取引先だけ支払ってはいけないという決まりがあり,原材料の返品はその仕入先だけ優遇したことになるからです。

また,原材料を後払いで仕入れた直後に破産すると,いわゆる計画倒産を疑われ,会社の代表者の借金が免責されなかったり,刑事罰を受けるおそれもありますので,

自己破産する時期を決める際にも注意が必要です。

3 半製品の段階

半製品は,まず,完成させて代金を全額受け取ることを目指すか,出来高で精算するか(進み具合に応じて代金のうち一定額を受け取る)を検討します。

あとわずかで完成するなら,従業員等に日当を払って完成させることもありますが,難しければ出来高で精算することになります。

出来高が決まらないうちに,自己破産する会社側から他の業者に任せてしまうと,本来であれば会社が受け取れたはずの財産を無償で渡してしまったと言われることもありま

す。

基本的には,自己破産を申し立てて廃業した日時点の現状を維持し,破産管財人という裁判所が選ぶ弁護士に任せることが多いです。

4 完成品の段階

完成したばかりの場合は,自己破産に伴って廃業すると,運送業者が使えない等で普段どおり引き渡すことができないのをどうするか検討しておきます。

また,未払いが残っている業者に完成品を持っていかれるトラブルがありますが,最悪の場合は会社の代表者が隠した等疑われて代表者の借金が免責されなかったり,

刑事罰の対象になりうるので,どうやって完成品を持っていかれないように保管するか検討しておく必要があります。

不良在庫になっている場合も,勝手に廃棄すると,本来であれば安値でもお金に換えられたはずのものが0円になってしまったと言われることもあります。

5 このように,会社の破産では製品や原材料をめぐって,様々な検討すべき点がありますので,会社の破産の経験豊富な弁護士と一緒にご検討ください。