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事業譲渡と自己破産

1 事業譲渡と自己破産は、どちらを先行するかが重要

事業をしている方から、事業を第三者や親族に譲渡したうえで、自己破産で借金を0にしてやり直したいという要望はたくさんいただきます。

事業を別会社に引き継ぐ際は、会社分割の形態をとることもありますが、中小企業の自己破産とともにする場合は、スピーディーで安価にできる事業譲渡が最も多いです。

そこで、事業譲渡を中心に書きますが、事業譲渡が先か自己破産の申立てが先かによって、メリットデメリットや注意点が分かれます。

2 事業譲渡を先にする場合

メリットとして、①代表者の意思で条件を決められる②事業譲渡代金を自己破産の費用や給料の支払い等に充てやすい③スピーディーに実行できることがあります。

裁判所が関与する前の段階で事業譲渡するので、親族や知り合いの会社に譲って、代表者は雇われて働くこともあります。

また、自己破産申立費用の捻出が難しいケースでも、事業譲渡代金が入ってくることで、自己破産申立てが容易になることがあります。

デメリットとして、①破産管財人による否認権行使のリスクがあります。

たとえば他の候補者をつのって相見積もりをとれば500万円で譲渡できたはずなのに、親族の会社に100万円で譲渡してしまうと、事業譲渡の対価が安すぎることになります。

自己破産で裁判所が選ぶ破産管財人という弁護士が、否認権行使といって、事業譲渡を無効にしたり、お金を追加で払うよう求めることがあり、大きな混乱が生じる可能性があり

ます。

3 自己破産を先にする場合

メリットとして、①破産管財人が行うので価格や譲受先の妥当性が問題にならず、混乱が少ない点があります。

デメリットとして、①裁判所の破産開始決定まで時間がかかり、途中で事業が続けられないリスクがある②譲受先や金額が代表者の自由にならない

4 事業譲渡は、従業員の雇用が守られる、突然事業をやめることによる取引先への迷惑を避けられる等メリットが大きいです。

ただ、不適切に行うと、後に無効と判断されて関係者に余計迷惑がかかりますので、弁護士によく相談するようにしましょう。

相続放棄の順番等

1 相続放棄の順番

親が亡くなった場合に、親の借金を引き継がないように家庭裁判所に申請して行う手続きを相続放棄といいます。

たとえば、亡くなった方をA、奥様をB、子供をC、Aの父をD、母をE、兄をFとします。

Aさんが亡くなったとき、最初に相続人になるのは、奥様Bと子Cになります。

そこで、最初にBとCが相続放棄するか検討することになります。

相続放棄は、基本的には自分が相続人になってから3か月以内に行わなければなりません。

2 相続放棄は兄弟まで回る

相続放棄の注意点として、子Cが相続放棄すると、次は亡くなった方の親(先の例ではDとE)が、その次はAの兄弟のFが相続人になることです。

DとEが存命の場合は、DやEが相続放棄しない限り、Aの借金を引き継ぐことになってしまいます。

ただDやEは、子供のAが亡くなっている年ですから、先に亡くなっているケースが多いです。

すると、Fが相続人になり、Fが相続放棄しない限り、Aの借金を引き継ぐことになってしまいます。

このため、Cが相続放棄する際には、Fに連絡してあげることをお勧めしています。

そうでないと、Fは、自分が知らないうちにCが相続放棄したことで相続人になっており、3か月経過すると相続放棄できなくなってしまう可能性があります。

Fの相続放棄の期限は、本来はCが相続放棄したことを知ったときから3か月なのですが、Fがいつ知ったかは証明が難しいです。

そこで、CがFに連絡して、FはCの相続放棄が裁判所で認められてから3ヶ月以内に相続放棄するのが安全なのです。

もちろん、Fの相続放棄も弁護士が委任を受けて行うことができます。

3 全員が相続放棄した場合

Fまで相続放棄すると、Aの相続人はいないことになります。

この場合Aの債権者(Aに払ってほしい借金がある者)はどうするのかとよく質問を受けます。

債権者は、相続人がいなくなった場合は、相続財産管理人を選任するよう、家庭裁判所に申し立てることができます。

相続財産管理人は、主に弁護士が選ばれ、Aの財産があればお金にかえて、債権者に分けます。