月別アーカイブ: 2019年 12月

差押えについての法改正

1 差押えがしやすくなる

民事執行法という差押えのルールを定めている法律が,令和2年4月1日から改定されます。

弁護士は,お金を払わない人に対する差押えをする側の代理人もあれば,返済ができなくなった人の債務整理をする側もありますが,全般的に,差押えをする側に有利になる

ように改定されています。

2 財産開示制度に刑事罰ができた

民事執行法には,財産開示という制度があります。

お金を回収する側の人(債権者)が,判決をとってもお金を払ってこない人(債務者)に対して,裁判所に申立てをして,債務者がどういう財産をもっているか開示させるも のです。

今まで財産開示は,あまり使われていませんでした。

その原因の一つは,債務者が正しく財産開示をしなくても,30万円以下の過料という制裁しかなく,お金がなくて払わない人に,さらに30万円支払う額を増やしても,あまり効果がなかったためです。

今回は,制裁が6ヶ月以下の懲役叉は50万円以下の罰金となり,逮捕・勾留等の身体拘束をされる可能性がでてきました。

これにより,財産開示の申立てを受けた債務者は,何らかの対応をする必要性が高くなっています 。

3 債権者に銀行口座や職場を教える制度ができた

また,債権者が判決をとると,裁判所に申し立てて銀行に照会することで,債務者の銀行口座の差押えに必要な口座番号等の情報が提供される制度ができました。

今までは,銀行が守秘義務上,債務者の同意なしに口座の情報を教えるのが難しいとされ,また,銀行の支店名まで特定しなければ口座の差押えができませんでしたので,債権者は,債務者の口座を知らなければ,当てずっぽうで差押えをかけることが通常でした。

今後は,債権を回収する側は,銀行口座を把握して無駄なく差押えをすることが可能になります。

逆に債務整理をする側では,判決をとられた後は,口座にお金を入れておくことは今まで以上にリスクになります。

さらに,養育費等を払ってもらえていない債権者(離婚した元配偶者)は,判決等の債務名義をとって,前述2の財産開示の申立てをした後は,裁判所に申立てをして市町村や日本年金機構等に照会することで,債務者の勤務先の情報を取得する制度ができました。

今までは,転職を機に給料の差押えができなくなることが多かったですが,今回の改定で,転職しても市県民税を徴収している市町村役場等を通じて勤務先を教えてもらうことで,給料差押えによる回収がしやすい制度になっています。