カテゴリー別アーカイブ: 債務整理

役員全員の同意が得られなくても会社の破産はできる

1 会社の破産は、取締役全員の同意を得て行うのが原則

会社が破産する場合は、会社の取締役会で会社の取締役の決議を行い、全員の同意を得て自己破産の申立てをするのが原則です。

会社の破産は、会社をやめるという大きな判断なので、経営に責任のある取締役たちが話し合って、破産をしようと決めるのを建前としているのです。

実際に取締役会を開いて一堂に会するのは、時間も労力もかかるので、法人の登記に名前がのっている取締役全員に、自己破産に同意する旨の書面を持ちまわるなどして

同意を得ているケースが多いです。

2 役員の一人の資格での破産申立て

しかし、役員の一人が名目だけで連絡先が分からない場合や、役員の一部が反対している場合に絶対に自己破産できないとすると、資金繰りがつかない会社を経営

する方は、ずっと督促を受け続けることになります。債権者も損金処理することができないままになってしまいます。

そこで、破産法では、会社の取締役の一人だけでも自己破産を希望する場合は、会社の破産申立てができるとしています。条文を見てみましょう。

(法人の破産手続開始の申立て)

第十九条 次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。

一 一般社団法人又は一般財団法人 理事

二 株式会社又は相互会社(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第五項に規定する相互会社をいう。第百五十条第六項第三号において同じ。) 取締役
三 合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員
2 前項各号に掲げる法人については、清算人も、破産手続開始の申立てをすることができる。
4 前三項の規定は、第一項各号に掲げる法人以外の法人について準用する。

3 準自己破産の申立て

これにより、株式会社の取締役だけでなく、一般社団法人や医療法人の理事なども一人で会社の自己破産の申立てができることになります。

実際、取締役同士で対立がある場合等は、対立している取締役に破産することを知らせると、債権者を連れてきて財産が盗まれたるなどの騒動になることもあります。

そこで、他の取締役に知らせずに自己破産申立てするケースもあり、準自己破産と呼ばれています。

ただし、代表取締役が不在の場合等は、特別代理人の選任申立てという手続きも合わせて必要になることがあります。

詳細は会社破産に詳しい弁護士におたずねください。

法人代表者の個人再生

1 法人代表者が個人再生を選ぶメリット

個人再生は、裁判所に申請して借金を減額してもらい、3年から5年で返済する手続きです。

法人の代表者は、法人の資金繰りに困った場合、自己破産したり、分割払いの話し合いをされる方が多いです。

しかし、自己破産の場合は、持ち家を手放さなければなりませんし、法人の役員を一旦退任しなければなりません。

分割払いの話し合いで払っていける負債額ならよいのですが、数千万の負債になると、分割払いで払いきるのは困難になります。

個人再生では、裁判所で借金を5分の1や10分の1に減らしてもらえば、役員をやめることなく、自宅も残して借金の負担を軽くすることができます。

2 法人代表者の個人再生の難しさ

ただ、個人再生は、サラリーマンを主な対象とする手続きであり、法人代表者には独特の難しさがあります。

第1に、法人に対する貸金や出資持分の処理の問題です。

個人再生では、少なくとも持っている財産全額分は、返済しなければなりません。

たとえば、1000万円の負債がある法人代表者が、法人に300万円貸し付けており、法人の株式(出資持分)を100万円有していれば、400万円の財産を持っているこ

とになります。

すると、最低400万円を返済しなければなりません。

第2に、法人代表者の収入の不安定さです。

個人再生は、借金を減らせば安定して返済できることが認められる条件です。

役員報酬が約束どおりもらえて、役員報酬から生活費を引いても余剰が出ていれば、安定して返済できるのですが、実際は役員報酬がもらえていないケースが多々あります。

収入が安定しないと、借金を減らしても返済できないと判断されて、手続きが認められない可能性があります。

3 まとめ

法人代表者の個人再生は、事業を続けながら借金を減額できる有効な手続きですが、経験豊富な弁護士でなければ、返済額がほとんど減らなかったり、手続きが認められない可

能性が十分あります。法人の債務整理や法人代表者の個人再生に詳しい弁護士に十分相談して方針を決めるのがよいでしょう。

 

中小企業活性化協議会を使った債務整理

1 中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援協議会)とは

先日、企業様が中小企業活性化協議会の窓口相談に行くのに同行してきました。

中小企業活性化協議会とは、国が都道府県ごとに設置した中小企業の資金繰りを支援する機関です。多くの件で商工会議所の中に設置されています。

資金繰りに困っている企業が、自社の課題を客観的に分析したり収益改善のための計画を立てる収益力改善支援、事業計画や金融支援を行う事業再生支援、企業の再生が困難に

なった場合でも代表者や保証人が保証債務の整理を必要になった場合の再チャレンジ支援などの支援事業があります。

弁護士がよく利用するのは、事業再生支援と再チャレンジ支援であり、公正中立な機関として債権者との話し合いの中を取り持ってもらうことがあります。

2 中小企業活性化協議会を通すメリット

⑴ 初回相談は無料

いずれの事業も、初回の窓口相談は無料となっていますので、気軽に相談に行けます。

ただ、1回の相談の機会の実を上げるため、弁護士が同席したり資料を作成する等のお手伝いをすることもあります。

⑵ 債権者との交渉がまとまりやすい

中小企業活性化協議会のスタッフは、金融機関のOB、公認会計士、弁護士などが多いです。金融機関からすると、金融機関の考え方がよく分かっているOBがおり、交渉成立の

実績も多いため、返済額を減らす稟議も通しやすくなります。

⑶ 認定経営革新等支援機関が経営改善計画を策定する場合に一部費用の補助が出る

国が認定する経営改善計画の作成のプロである認定経営革新等支援機関が、このように今後の売上を増やして経費を減らしていくという経営改善計画を作る際に、企業が認定

機関に払う費用が一部公費でまかなわれるメリットがあります。当グループの税理士法人心も認定機関になっています。

3 デメリット

⑴ 本格的な支援には費用がかかる

借金額を減らしてもらう等本格的に支援を受ける場合、中立な立場の公認会計士等の関与がいるのが通常で、専門家に払う費用が高額になりがちです。

⑵ 債権カットでなくリスケジュールで終わることが多い

大幅に元金を減らしてもらう話し合いは、近年成立例も増えているものの、リスケジュールという元金はそのままで毎月の返済額を減らすだけで本当に資金繰りができないの

かが厳しくみられる傾向になります。結果的に元金が減らないままというケースが多くなります。

⑶ あくまで話し合いなので、債権者の金融機関が同意しなければ不成立で終了することになります。

4 このようにデメリットもありますが、話し合いで企業の金融機関からの借入の元金を大きく減らすには、最も実績がある機関になります。

小規模な企業でも成立例があるので、事業の再生の相談を受ける弁護士としては、まず初回相談の同行をお勧めするケースも多いです。

破産管財人との面談

1 破産管財人との面談が必要な場合

自己破産する際、破産管財人という依頼する弁護士とは別の弁護士が裁判所

から選ばれ、自己破産する方が面談に行かなければならないことがあります。

自己破産には、同時廃止と管財事件と2種類あります。

財産もなく、借金が増えた経緯にも問題がなければ同時廃止となり、破産管財人は選任されません。

20万円以上の財産があるとか、借金が増えた経緯に問題がある場合が、管財事件という破産管財人が選ばれるケースになります。

破産管財人が選ばれると、自己破産する方は面談に行く必要があります。

2 破産管財人との面談の流れ

まず、依頼した弁護士(申立代理人といいます。)を通じて、管財人の弁護

士と面談の日時を決めます。

持ち物は、管財人から指示があればそれに従いますが、一般的には最新記帳

した通帳、最新の家計の状況、車を所有している方は車の鍵、不動産をお持ち

の方は権利証等です。

面談の場所は、破産管財人の弁護士の事務所が多く、おおむね1~2

時間程度です。

面談は、初回は依頼した弁護士と一緒に行き、2回目以降は自己破産する方

だけで行くことが多いです。

管財人は、財産をお金にかえたり免責(借金をチャラにする)してよいか裁判所に意見を述べる立場なので、財産をお金にかえるのに必要な質問や、免責してよいか疑問に思う点を質問し、自己破産する方や依頼した弁護士がこれに回答します。。

当日回答できなかったことや、提出するよう指示されたことは、後日回答し

たり提出できるよう準備します。

また、管財人がつくケースは、自己破産する方宛ての郵便物が管財人に転送

されるので、郵便の受取方法を決めます。

3 管財人面談での対応

自己破産で免責を受ける(借金をチャラにしてもらう)ためには、管財人に求められた質問に回答したり資料を提出することが条件になります。

そのため、基本的に質問には正直に答え、資料の提出には素直に従うのですが、どうしても難しい場合は、一人で悩まず依頼した弁護士(申立代理人)に相談しましょう。

 

 

債務整理をしても自宅が残るか

1 債務整理の種類によって自宅がどうなるかは変わる

借金の支払いに困った方が債務整理を検討するうえで、お住まい(自宅)がどうなるかは、今後の生活の立て直しに非常に重要です。

自宅がどうなるかは、債務整理の種類によって変わります。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の大きく3つがあります。

任意整理は、お金を貸した業者と弁護士が、分割払いの話し合いをすることです。

個人再生は、裁判所に申請して借金を減額してもらう手続きです。

自己破産は、裁判所に申請して借金を基本的に0にしてもらう手続きです。

 

2 ご親族の所有又は第三者が借りている自宅であれば、どの方法でも今の自宅に住んでいられる

自宅は、大きく分けると、①親族所有の家(父の持ち家等)②第三者が借りている家(社宅や配偶者が借りている家)③ご本人が借りている家④ご本人が一部でも所有している家 の大きく4つに分かれます。

このうち、①と②は、債務整理のどの手続きをしても、今の自宅に住み続けることができます。

債務整理で最も自宅への影響が大きい自己破産でも、ご本人の財産がとられるだけで、保証人でない親や配偶者の財産をとるわけではないからです。

 

3 ご本人が借りている物件は、賃料を滞納していなければ住み続けられる

③のご本人が借りている物件も、基本的に今の自宅に住み続けることができます。

自己破産したことを理由に賃貸借契約を解除することは禁じられているからです。

ただ、賃料を滞納していると、債務整理をしたからではなく、滞納していることを理由に、賃貸人が退去を求めることもありますので、要注意です。

 

4 ご本人が所有している自宅は、自己破産では残らず、他の2つでは原則残る

ご本人が所有している自宅は、自己破産の場合は手放すのが原則です。

自己破産は、目ぼしい財産をお金にかえて債権者に分ける手続きだからです。

個人再生は、住宅ローンを約束どおり払うことで、自宅を残す道を開いています。

ただまれに要件を満たさない方がいるので、詳細は弁護士におたずねください。

任意整理は、基本的に住宅ローンの債権者を対象にしませんし、自己所有の場合も収入から返済できれば、自宅は残ります。

以上

任意整理と裁判

1 裁判を起こされても任意整理はできる

支払いが遅れて、消費者金融等の債権者から裁判を起こされたのをきっかけに、債務整理の相談に来られる方は大勢いらっしゃいます。

いきなり日が決められて、遠方の裁判所に行かなければならない・・

一括では払えないから、自己破産するしかないのではないか・・

様々な不安を抱えた方が来所されています。

しかし、裁判を起こされても、任意整理ができないわけではありません。

2 2ヶ月程度で話し合いをまとめる必要がある

消費者金融等が、払えていないお金の支払いを求める裁判は、証拠を残していないことはほぼありませんので、最終的には消費者金融等が勝訴する可能性が高いです。

消費者金融等は、勝訴すると、給料や預貯金を差し押さえて、強制的に取り立てることができるようになります。

そのため、任意整理で交渉する場合の消費者金融の立場は、裁判を起こす前よ

り強くなっています。

また、この種の裁判は、弁護士が受けても、2回目の期日には、結審となる可能性が十分あり、裁判を起こされてから2カ月程度の間に話合いをまとめ、あまり間を開けずにその債権者に対して支払いを始める必要があります。

それでも、弁護士に依頼すれば、遠方の裁判所まで行かずとも、話合いがまとまるケースが少なくありません。

3 裁判を起こされた場合は、お早めに弁護士に相談を

裁判を起こされて、相談するか迷っているうちに判決が出て、いきなり給料の差押等を受ける可能性もあります。

裁判所からの書類が届いた場合は、お早めに弁護士にご相談ください。

自己破産の申立てに必要な通帳の集め方

1 自己破産の申立てには、通帳等の資料が必要

自己破産は、裁判所に申請して借金を0にしてもらう手続きです。

借金を0にしてもらう以上、目ぼしい財産が残っていないことを証明しなければならりません。

裁判所によりますが、少なくとも破産申立て前1年分の預金通帳の動きが必要になります。

自己破産を申請する裁判所は、名古屋市内にお住いの方なら名古屋地方裁判所というように、お住まいを管轄する地方裁判所になります。

集める資料は、その裁判所のルールに従うことになります。

 

2 通帳がない場合や合計記帳がある場合は、入出金履歴を取り寄せる

通帳を過去1年分というと、まずはお持ちの通帳をATM機で記帳します。

ただ、過去の分を捨ててしまっていると、1年分まで残っていないことがありま すし、そもそも通帳が発行されていないケースがあります。

また、長い間記帳してないと、合計記帳といって、何十件分もまとまった金額しか通帳に表れないことがあります。

このときは、該当期間の入出金履歴を取り寄せる必要があります。

インターネット上の銀行のホームページからマイページにログインして、入出金履歴が出力できればよいのですが、1年前までさかのぼれないことも多いです。

そうすると、銀行の支店に問い合わせて取得することになります。

このとき必要な資料や来店が必要かは、銀行の支店の判断になります。

 

3 通帳を紛失している場合は、通帳を再発行した方が便利なことが多い

通帳を紛失している場合は、この機に通帳を再発行した方が便利な場合が多いです。

というのは、自己破産では、最新の状態を記帳して教えてくださいと複数回言われる可能性があります。

手続に半年程度かかる以上、日々変動する可能性があるからです。

そうすると、入出金履歴を取り寄せただけでは、何度も入出金履歴を取り直すはめになりかねず、ATM機で記帳できるようにしておく方が便利なことが多いです。

 

4 届出印を紛失している場合は、改印手続で来店が必要になることが多い

通帳再発行でも入手金履歴の取り寄せでも、支店に来店が必要な場合は、銀行届出印が必要であるのが通常です。

届出印を紛失している場合は、改印手続という銀行届出印を今持っている印鑑に変える手続きが先に必要で、それが終わってからしか通帳再発行や入出金履歴の取り寄せができないのが通常です。

改印手続と入出金履歴の取り寄せで少なくとも2回来店することになるのが通常ですので、スケジュールに余裕を持って資料集めをしていただくことをお勧めします。

時効の援用が成功しなかった場合の対応

1 時効の援用が成功しない場合

時効の援用は、最後の借入や返済から長期間経過したときに、法律上正しい方法で主張して借金の支払義務をなくす手続きです。

消費者金融やカード会社からの借入は通常5年ですが、判決や裁判上の和解があればそこから10年間経過しなければ、時効の援用は成功しません。

また,債務の承認(借金があることを認める言動)があれば時効の完成が猶予されるので、返済をしていなくても、債権者と話し合いをして支払の約束をすれば、時効の援用が成功しないことがあります。

 

2 時効の援用が成功しない場合の債務整理の手続きの選び方

時効の援用が成功しなければ、何もしないか、何らかの債務整理を選択することになります。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産と大きく3種類あります。

このうち、時効の援用が成功しなかった方が個人再生を選択することは稀です。

なぜなら、個人再生は、裁判所に申請して、借金を減額して3~5年間で返済する手続きで、裁判所が継続的に返済する能力があると認める必要があります。

時効の援用を試みる方は、長期間返済していない方ですから、長期間返済できていなかった方がなぜ今後は返済できるのか、裁判所を納得させることが難しいからです。

そうすると、債務整理の中でも、弁護士が債権者と分割払いの話し合いをする任意整理か、裁判所に申請して借金を0にしてもらう自己破産のどちらかを中心に検討することになります。

 

3 時効の援用が成功しなかった場合の任意整理の注意点

任意整理は、利息をまけてもらって元金だけの分割払いにしてもらうことが多いです。

しかし、時効の援用を試みた方は、長期間返済しておらず、利息や延滞金は多額になっているはずです。

それだけ債権者を待たせておきながら元金だけの分割払いはめったに認められません。想定しているより多い返済額になるのが通常です。

 

4 時効の援用が成功しなかった場合の自己破産の注意点

自己破産する場合は、長期間返済していない間のお金の使い道が問題になります。

たとえば、債権者に返済できなくなった後に入ったお金が、無駄づかいや親族への返済に使われていれば、自己破産しても免責されない(借金が0にならない)とか、親族だけ優先して返済した分を取り返す必要が生じることがあります。

 

5 このように、時効の援用が失敗した後の債務整理には特有の難しさがありますが、経験値のある弁護士であれば、何らかの解決をみることが多いでしょう。

詳細は弁護士までおたずねください。

法人の破産費用と代表者の破産費用の区別

1 法人の破産費用は、法人の財産から、代表者の破産費用は代表者の財産から用意するのが原則

会社経営をしている方から廃業の相談にのっているときに、会社と代表者の破産費用の用意の仕方がよく問題になります。

会社が破産する場合、代表者が会社の借入の連帯保証人になっていることが通常です。会社が破産すると、連帯保証人の代表者も一括請求されるので、破産せざるをえないことが多いです。

ただ、建前では、会社と代表者は別人格で、それぞれ破産するかどうか検討します。

会社の破産費用は会社の財産から、代表者の破産費用は代表者の財産から用意するのが原則です。

2 会社の財産を代表者の破産費用に充てないと費用が用意できない場合の対処法

実際、会社は売上が入ってくるので破産費用を用立てることはできるが、代表者は会社の運転資金に充てて個人資産がほとんど残っていないというケースも多いです。

このとき、費用が用意できないので代表者が自己破産できないとすると、代表者はやり直しの機会がなくなってしまいます。

そこで、代表者が会社からお金をもらって破産費用を出すことを正当化できる理屈が必要になります。

たとえば、代表者から会社への貸付金がある場合は、その貸付金を回収して代表者の破産費用に充てたり、代表者が役員報酬をもらえていなければ、役員報酬をもらって代表者の破

産費用に充てたと説明することを検討します。

3 無条件に会社の財産で個人の破産費用を用意してよいわけではない

個人資産から十分に破産費用が用立てられるのに、会社の財産から代表者個人の破産費用を出すのは問題があります。

会社の破産管財人という裁判所が選ぶ第三者的立場の弁護士が、代表者個人に損害賠償請求をしたり、代表者の破産手続で免責(借金をチャラにすること)が得られない可能性

もあります。

また、会社の債権者から横領罪にあたると主張される可能性もあるので、破産費用の用立て方は十分な注意が必要です。

詳細は、会社の破産に詳しい弁護士におたずねください。

自己破産でローンのある車を残すための買い取り

1 自己破産すると、ローンが残っている車は引き上げられるのが原則

自己破産しても時価20万円以下の車は残るとよく言われますが、ローンが残っている車の場合は、別に考える必要があります。

自己破産する場合、車のローンも含めてすべての債務の返済をやめなければなりません。

車のローンを約束どおり払わなければ、ローン会社に所有権が残っていることが多いので、ローン会社に車を引き上げられてしまうのが原則です。

この場合、時価が20万円以下であっても、車のローン会社が引き上げると決めれば返還しなければなりません。

2 ご親族が車のローンを完済することは可能

自己破産する場合に返済をやめなければならないのは、自己破産する本人です。

自己破産しない親族等が車のローンを援助することは法律上可能です。ご親族が一括で車のローンを払えば、ローン会社に車を引き上げられることはありません。

ローン会社が引き上げなければ、車の時価が20万円以下であれば、基本的に自己破産する方の名義のままでも手元に残せることになります。

3 車のローン残額と車の時価に注意が必要

自己破産する方の名義のままでは、親族がローンを完済しても、車の時価が20万円以上であれば、手元に残らないことになりかねません。

そこで、お金を払ってくれた親族に車を買い取ってもらったことにして、名義変更することが考えられます。

ただし、この方法は、車のローン残額が車の時価より多い場合でないと、破産法上問題があります。

たとえば、車のローン残額が100万円、車の時価が60万円なら、相場が60万円の車をご親族が100万円で買い取ったことになるので、問題ないと考えられます。

一方、車のローン残額が40万円で、車の時価が60万円なら、相場が60万円の車をご親族が40万円で買い取ったことになり、問題があります。

破産法は、時価より安くで財産を処分することを禁止しているので、破産管財人という裁判所が選ぶ弁護士に車を取り返されたり、借金がチャラにならない(免責不許可)の

リスクがあります。

4 まとめ

ローンが残っている車の買い取りには、法律上難しい問題がありますので、自己破産に詳しい弁護士に相談してから実行するようにしましょう。