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未払給料立替払制度の注意点

会社が破産する際に、従業員の給料を払いきれないことは珍しくありません。

このとき、独立行政法人労働者健康福祉機構の立替払制度を利用することが多いです。給料が払われず生活に困る従業員さんにとって、役に立つ制度であること

は間違いありませんが、使えないケースもありますので、注意が必要です。

1 支払いまで最低3ヶ月程度かかる

立替払制度は、①未払給料額に関する資料を集める②未払給料額の計算を終

えて申込書類を従業員宛てに送付する②破産管財人が内容を検討して証明する

③立替機構が内容を検討して支払う と何度も資料と書類のやりとりがありま

す。

どんなに早くても、本来の給料日より3ヶ月程度遅れてしか支払いは受けら

れません。

2 事業開始1年未満の廃業や解雇から6ヶ月経過後の破産申立てでは使えない

立替払の要件として、事業が1年以上継続していることや、解雇から6ヶ月

以内に破産申立てをしたこと等があります。

これら事業者側の要件によって、立替払制度が使えないケースもあります。

3 解雇予告手当や賞与は対象外

立替払制度の対象になるのは、定期賃金と退職金です。

突然解雇されたことで、平均賃金の30日分の支払を受ける権利がある解雇

予告手当や、定期できなく臨時に支給されるだけの賞与は、立替払いの対象で

はありません。

4 金額は最高8割まで

立替払制度では、最高で未払い金額の8割までしか払われません。

また、30歳未満は110万円まで、30歳以上45歳未満は220万円ま

で等、金額による上限もあります。

5 役員、親族、下請けは使えないケースが多い

立替払制度は、あくまで生活に困る従業員の保障ですから、代表者や取締役

は使えないのが原則です。

親族の従業員も、従業員と同様の勤務実態が証明できれば使える可能性はあ

りますが、認められないことも多いです。

下請業者や外注は、従業員ではないので、対象外です。

6 事業をやめるとしても、従業員に迷惑をかけたくないと考える代表者さんは

大勢いらっしゃいます。

立替払制度は安心材料の1つになりますが、やはり給料が払いきれな

くなる前に、事業をやめる決断をすることが大切です。

立替払制度の詳細は、弁護士までおたずねください。

 

 

司法修習生の指導

1 司法修習生とは

私が所属する愛知県弁護士会の倒産実務委員会で、司法修習生向けに自己破産と個人再生の事例に基づく指導を行う機会がありました。

司法修習生とは、弁護士、裁判官、検察官になるための研修生のことです。

司法試験を受験して合格した人を対象に、約1年間、弁護士、裁判官、検察官の実務を見学することを通じて、実際に弁護士、裁判官、検察官になったときに第一線で活躍

できるようにするための制度です。

当日は、仮設事例をもとに、司法修習生が事前に回答案を作成し、私ともう1人の弁護士で回答を検討しました。

一般の方にも役に立つよう、少し事例をかえて解説します。

2 自己破産の案件

建築業を営む個人事業者で、財産として預金10万円、ローンのない時価60万円の車、解約返戻金80万円の保険、売掛金50万円などがあります。

この方が自己破産するとき、車が残るかどうかや、手続きの費用をどうやって用意するか等検討しました。

車は、必ず残るとは限りませんが、自由財産拡張といって、生活にどの程度必要かや今後の収入の見込み等を丁寧に主張することで、残せる可能性が十分あると思われます。

また、手続きの費用は、保険を解約したり、売掛金を回収することで、用立てるのが通常でしょう。

これは、自己破産で残せる財産は原則99万円までであり、車60万円と保険80万円の両方が残ることはないと見込めますから、保険は解約して費用に充てる方が有効な使い

方であるからです。

3 個人再生の案件

サラリーマンが、A社から100万円、B社から100万円、C社から200万円、D社から200万円、E社から住宅ローン2000万円を借り入れしているとします。

財産として時価1500万円の自宅、預貯金10万円、時価50万円の車があるとき、個人再生をするとどこまで返済額が減るか等検討しました。

個人再生では、住宅ローンは約束どおり返済し、うまくいけば他の借金が5分の1まで減るので、A社からD社の600万円が120万円まで減ります。

返済期間は、3年から5年ですから、住宅ローン以外の毎月の返済額は、2万円~3万4000円程度になります。