カテゴリー別アーカイブ: 自己破産

偏頗弁済があった場合の自己破産への影響

1 偏頗弁済とは

自己破産でよく問題になる事例として、一部の債権者にだけ返済してしまうケースがあります。たとえば、次の事例をもとに破産に及ぼす影響を考えてみます。

EX)Xさんは、消費者金融Aから100万円、カード会社Bから100万円、勤務先Cから50万円借り入れている状態で弁護士に自己破産を依頼した。

Cは給与天引きで毎月5万円ずつ10カ月かけて回収し、Cへの借金がなくなった状態でXさんは破産の申立てをしようとした。

Xさんは、AとBへの返済を弁護士に止めてもらっている間に、Cにだけ50万円返済したことになり、これを偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。

2 予納金があがり、管財事件になる

自己破産には、同時廃止という簡易な手続と、管財事件という複雑な手続の2種類があります。

偏頗弁済がある場合は、後で説明するように、50万円取り返してきて他の債権者AやBにも平等に分配しなければならないので、破産管財人という第三者的立場の弁護士が選ばれる複雑な手続になるのが原則です。

同時廃止では裁判所に納める費用は1万数千円で済んだところが、管財事件になると最低20数万円、高ければ40万円くらい納める必要が出てきますので、大きな費用増になってしまいます。

3 破産管財人がC社に50万円返還するよう請求する

破産管財人は、裁判所から選ばれ、C社にかたよって払われた50万円をC社に請求して取り返す権限があります。これを否認権の行使といいます。

C社が話し合いで返さない場合は、管財人はC社に対して裁判して取り返すこともあります。こうなると二重に勤務先に迷惑をかけることになりかねません。

4 Xさんが免責不許可となる可能性がある

破産法では、特定の債権者に特別の利益を与える目的で返済した場合を免責不許可事由と定めています(破産法252条1項3号)。

つまりXさんが免責不許可、つまり破産しても借金がチャラにならない可能性があるということです。

5 まとめ

このように、軽い気持ちで返済したことが思いもよらない悪い結果を招くこともありますので、弁護士に依頼する以上は、お金の動かし方については弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。

投資詐欺と自己破産、個人再生

1 投資詐欺による借金

債務整理の相談に10年以上のっていると、昔に比べて投資詐欺や副業詐欺に引っかかったことで借金が増えたという人が増えていると感じます。

いずれも詐欺を働いている者が一番悪いのですが、一気に多額の借入をすることになり、見通しが外れるとすぐに返済できない状態になるので注意が必要です。

ここでは、投資詐欺が原因で借金ができた場合に自己破産、個人再生をする場合の問題点を解説します。

2 自己破産では免責不許可の可能性が十分ある

破産法は、投資によって多額の借金を抱えることを免責不許可事由(借金をチャラにできない事由)と定めています(252条1項4号)。

特に借りてすぐに返済できないからと弁護士に自己破産を依頼しようとしても、債権者(お金を貸した銀行や消費者金融)からすると、投資が運よく成功すれば高い利益が得られ、

失敗した場合は破産でチャラにすればよいと思って(返済する気なく)借入をしたと考えるので、詐欺で刑事告訴されることもあります。

裁量免責といって、生活状況や破産手続中の対応によっては免責を得られるケースもあるので、必ずしも諦める必要はありませんが、破産管財人という第三者的立場の弁護士が選ばれ、破産の費用もかさみ、破産管財人の調査も厳しいものになります。

3 個人再生では返済額がほとんど減らない可能性がある

個人再生は、投資詐欺で借金が増えたというだけで不許可になるわけではありません。

しかし、個人再生では借金の返済額は、少なくとも財産の総額を上回っていなければなりません。

たとえば、借金額が1000万円あり、財産が1100万円あると裁判所に認定されれば、全く借金が減らないことになります。

投資詐欺の場合は、配当を受ける権利(債権)が存在するか、本当に詐欺なら損害賠償請求できるはずです。

たとえば1000万円借入して1000万円投資した場合は、1000万円の損害賠償請求権か1000万円以上の配当を受ける権利を有しているのが通常です。

これが回収できるなら1000万円の財産になるので、借金額は全く減りません。つまり、回収できないということが証明できなければ、個人再生をしても意味がないことになり

ます。

 

 

 

破産管財人の否認権行使への対応

1 破産管財人の否認権行使とは

破産管財人は、自己破産の申立てで、ある程度財産がある場合や、借金が増えた経緯に問題がある場合に、裁判所が調査のために選任する弁護士です。

破産管財人は、破産前に問題のあるお金の使い道があれば、取り返してきて債権者に配る財産を増やすのも仕事です。

たとえば、破産者Aが、弁護士に破産を依頼した後に、母Bから借りていた20万円だけ返済してしまったとします。

破産管財人は、他の債権者は返してもらっていないのにBだけ20万円返してもらったのは不平等であるとして、Bに対し、20万円管財人に払うよう請求できます。

管財人は、Bから20万円取り返して、他の債権者にも分配します。これを、AのBに対する返済の効果を否定することから、破産管財人の否認権の行使といいます。

2 Bに理解を得られるよう説明する

ここでは、破産を依頼される方Aの立場にたって、どういう対応が考えられるか検討します。

母Bからしても、約束どおりAに返してもらっただけなのに破産管財人なる弁護士から請求されるのは、驚かれると思います。

ただ、Bが20万円を返してくれないとなると、場合によってはAが免責不許可(借金がチャラにならない)になったり、管財人がBに裁判を起こすかもしれません。

Bにより迷惑がかかるので、AからもBに説明して、20万円を管財人に払うよう説得することが考えられます。

3 破産者や第三者が破産財団に組み入れる

それでもBが20万円を払えないときには、A自身が収入や財産から20万円を払うことも考えられます。

また、ご兄弟等第三者に援助してもらって20万円を用意することも考えられます。管財人としては、20万円Bに払っていなければAの財産として残っていたは

ずの20万円を、他の債権者に配れればよいので、誰が20万円を用意しても柔軟に対応することが多いからです。

4 破産管財人の否認権行使は、依頼する弁護士に相談せずに勝手に返済してしたり、財産を渡したことが原因で問題が生じるケースも多いです。

勝手に返済したり財産を渡す前に、依頼する弁護士によく相談しましょう。

 

自己破産しても続けられる事業

1 法人代表者や個人事業主さんにとって、事業が続けられるかどうかは今後の生活の立て直しのために非常に重要です。

それにもかかわらず、破産法にも、弁護士や裁判官向けの本にも、事業を続けるための条件を明示しているものはありません。

相談する弁護士や、あたる裁判官の判断によっても分かれるケースがあるものですが、

2 法人の場合、事業を譲渡する必要がある

法人の事業は、少なくとも破産する法人のまま続けることはできません。

法人の資産は、破産手続では破産管財人が全部現金化し、全契約を解除しなければならず、何の収入も得られないからです。

そこで、別法人や知人に事業を譲渡して、代表者は譲受会社のもとで従業員として雇われたり、専属的な下請けとして仕事をもらう形式で事業を続けるケースもあります。

ただ、この場合も無償で譲渡するだけでは、破産管財人が否認することになりますので、適切な対価で法人の資産を買い取ってもらう必要があります。

法人の資産には、車や売掛金のような目に見えるもの以外に、借りている物件の敷金や機械類も含まれますので、一括で買い取ってくれる方が見つかるかが最初のポイントです。

3 個人事業の場合は、後払いや事業所・在庫の必要性による

個人事業者の場合、法人と異なり、全契約や全財産をなくすわけではありません。

ただ、破産手続で一部だけ優先して返済することが禁じられる点と、生活に必要最小限の資産しか残せない点がハードルになります。

たとえば、外注や従業員を雇うと、締日があって後日支払うことになるので、一時的に未払いの外注費等が発生しており、銀行の借金に優先して外注費を払うことが問題となるケ

ースがあります。

また、店舗がいる場合も、破産では明渡しして保証金を返してもらう必要があるし、在庫商品を抱えることもできないので、続けるのが難しい類型です。

逆に、自分が身一つで働けばよい形態は続けやすいです。元請に仕事に必要や機械や資材を用意してもらうことで仕事を続ける方もいらっしゃいます。