月別アーカイブ: 2022年 3月

取引期間が短い場合の債務整理

1 取引期間が短くとも債務整理はできる

近年、借入を始めて1年以内など短い間に返済が難しくなって債務整理の相談      をされる方が増えています。

取引期間が短いと債務整理できないという決まりはありませんので、取引期間が短くても、債務整理はできます。

ただ、取引期間が短いと、債務整理の効果があがりにくかったり、失敗する確率は高くなりますので、債務整理の種類ごとに見ていきます。

2 取引期間が短い場合の任意整理は、返済額が少ししか減らない

任意整理は、弁護士が相手の業者と交渉して、毎月の返済額を減らしてもらったり、利息を減らしてもらう手続きです。

取引期間が短い場合、相手の業者は、ほとんど利息収入を得られていないため、利息を0にはしてくれず、5~10%程度減るにとどまることも多いです。

また、毎月の返済額も、5年分割ではなく、3年分割やもっと短い期間を求められることもあります。

3 個人再生では、相手の業者が賛成してくれれば影響は少ない

個人再生は、裁判所に申請して借金を5分の1程度まで減らしてもらい、3~5年分割で返済する手続きです。

個人再生は、基本的に債権者の2分の1以上が賛成しなければなりません。

借入してすぐに返済しなくなった方に対しては、最初から返済の目途がなかったのに借りたのではないかと疑い,反対しやすい傾向があります。

ただ、反対して自己破産されると返済額は0になるケースも多いので、せいいっぱい返済の努力をしていることや経緯が債権者に理解してもらえれば、他の手続きほど影響はないといえます。

4 自己破産は、管財事件になりやすく、免責も受けにくい

自己破産は、裁判所に申請して借金を0にしてもらう手続きです。

借入してすぐに自己破産した場合、最初から返済する見込みや意思がなかっ

たのに借入したとして、免責(借金を0にする)が受けにくくなります。

最終的に免責されても、管財事件という裁判所に支払うお金が20万円以上 かかるケースになることが多いです。

5 影響は、金額や借入期間による

取引期間が短いといっても、1回も返済していない場合と、取引期間が1年 ある場合では、大きく差があります。

取引期間が短くても、何らかの方法はとれることが多いので、あきらめず弁護士までご相談ください。

 

事業者や会社代表者の自己破産の難しさ

1 事業者の自己破産とサラリーマンの自己破産の違い

自己破産される方の中には、今も個人事業を営んでいる方や、法人の代表者である方、少し前まで事業をしていた方も大勢いらっしゃいます。

こういう事業をしていた方の自己破産は、サラリーマンや年金ぐらしの人の自己破産にはない難しさがあります。

たとえば、事業用の資産である機械工具や在庫商品があるケースもありますし、仕入先や外注先の未払い、お店の賃料の未払いがあるのは、サラリーマンや年金暮らしの人には

ない特徴です。

2 管財事件になる可能性が高い

こういう事業性の財産や負債がないか調べたり、実際財産がある場合は、お金にかえられないか調査するため、裁判所は、事業者や会社代表者の破産は、基本的に管財事件とす

る運用をしています。

管財事件とは、管財人という裁判所が選ぶ第三者的立場の弁護士が、財産をおかねにかえて債権者に分けられないか調査する自己破産です。

3 事業用資産の注意点

売掛金のように顧客から回収すべきものは、破産管財人が回収するのが基本です。

在庫商品や機械類は、個別に買主をつのるか、まとめて買取業者に売るか等お金にかえる方法が問題となります。

日当制で土木建築業の手伝いをしている方等で、小さな工具を残す希望がある場合は、今後の生活にどの程度必要かや、時価の出し方によって、残せるかどうかがかわります。

4 事業にまつわる負債

仕入先や外注先の未払いが残っていないかは、通帳や決算書でお金の流れを調べたり、請求書等の郵便物を調査する必要があります。

自己破産では、原則としてお店等事業用の賃借物件は明け渡しますが、個人事業者が原状回復して返還できない場合、下手をすると個人で今後もずっと賃料を払うはめになりますので、取り扱いが難しいところです。

5 事業者や会社代表者の自己破産は、その経験が豊富な弁護士でなければ対応が難しい点がたくさんあります。

事業が止まるとお金が入ってこなくなり、全くお金がなくなってからでは自己破産もできなくなりますから、早めに弁護士にご相談ください。