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裁判員裁判における量刑評議の在り方について

裁判員裁判は,法律家でない皆さんも参加される可能性がある刑事事件の裁判です。

裁判所が,選挙人名簿を参考に裁判員候補者を呼び出し,一定の質問等をへて実際に裁判員に選ばれる方が決まります。

裁判員は,プロの裁判官とともに,犯罪を犯した疑いがある被告人を無罪にするか有罪にするか,有罪であれば,どれくらいの刑罰を科すかを決めます。

このどれくらいの刑罰を科すかを,「量刑」といい,裁判官と裁判員が協議して量刑を決めることを量刑の評議といいます。

大学教授や裁判官が,この裁判員裁判の量刑の評議をどのように行うべきかをまとめたのが,「裁判員裁判における量刑評議の在り方について」という本です。

裁判員裁判の弁護を務める弁護士が必ず読む本といっても過言ではありません。

この本によると,以前の刑事裁判は,被告人に前科がないとか,被告人を監督してくれる親族がいるといった,犯罪自体とは直接関係ない事情も総花的に主張されていました。

また,刑法の殺人罪には,保険金殺人,介護疲れを理由とする殺人,怨恨を理由とする殺人など,社会一般的には,非難の程度が違うものが一緒くたに規定されています。

そこで,刑事裁判は,被告人が行った行為にふさわしい刑罰を決める手続きであることから,まずは,被告人の行為の社会的類型(保険金殺人,介護疲れを理由とする殺人等)を決め,裁判員の方に,量刑検索ソフトを使って,量刑の大体の幅を示します。

その他の事情は,それを微修正する要素として取り扱うように評議を行うという方法を勧めています。

たしかに,刑事裁判が初めての方には,大体の幅を示してもらうことには大きな意味があると思いますが,その社会的類型の決め方が本当に正しいのか,量刑検索ソフトにかける条件が大ざっぱすぎて,本当に今回の件と似た類型のものが選ばれているのか疑問に思われるケースもあるでしょう。

量刑検索ソフトで出てくる他の件と今回の件で,本当に違いがないのか,違いがあるならどのように量刑に反映させるのがよいか,検討する必要があります。

また,弁護士としては,前科がないとか,監督してくれる家族がいるという事情が,なぜ量刑を軽くする事情になるのかを,一般の方に理解していただけるように説明する必要があります。

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