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司法修習生向けの倒産法研修

1 司法修習生とは

司法試験に合格してから弁護士になる前に,司法修習という研修を受ける期間があります。

司法修習を受けている方を司法修習生といいます。

私も,以前は司法修習生として,債務整理に関する研修を受けました。

先日,私が,司法修習生を相手に,自己破産と個人再生の実務対応を講義する機会がありました。

2 個人事業主さんの自己破産

1問目は,個人事業をされている方が自己破産する際に,どういう財産が残るかや,従業員の給料・解雇予告手当をどうやって支払うかを検討するものです。

一般的には,自己破産する場合,最大99万円までで,生活に必要な財産しか残りません。

たとえば解約して60万円返ってくる保険と時価50万円の自動車がある場合,どちらかしか残すことはできませんし,生活に必要と認められなければ,どちらも残らない可能

性もあります。

また,従業員の未払給料には,独立行政法人労働者健康安全機構の立替払制度が使えますが,解雇予告手当には使えません。

3 個人再生と返済していけるかの判断

2問目は,サラリーマンが個人再生をする際に,払っていけるかどうかを裁判所がどうやって判断しているかや,払っていくのが難しいと判断されそうな場合に,どのような

プランがありうるかを検討するものです。

個人再生は,裁判所を通じて債務を減額する手続きで,減額した後の債務を3~5年で返済できなければ,認められません。

裁判所は,返済できるかどうかを,家計の状況の収支を見ること,弁護士への積立てが滞りなくできていること,今後見込まれる収入や支出が変化する事情等を総合して判断していると思われます。

まず家計の状況が赤字であれば,返済ができないと認定されがちです。

たとえば,収入が30万円で支出が積立てを除いて28万円なら,毎月2万円の返済能力ですが,5年で返済するときに毎月3万円の支払が必要であれば,

返済すれば赤字(収入より支出が多い)になるので,返済できないと認定される可能性が高いです。

それなら,弁護士は,ボーナスからいくら返済に回せるのかや,その月だけ収入が少ない又は支出が多い理由を説明できるか,また保険を解約したり携帯電話をかえることで

今後の支出を減らせないか等を検討して,債務を減らせば返済できると説得できないか考えます。

4 司法修習と実務

司法試験では,破産や個人再生は,選択科目には入っていますが,選択していない方も多くいます。

また,選択していても破産法や民事再生法の理論が分かっていることと,実務での対応方法は違うところも少なくありません。

司法修習生を指導することで,私が実務で行っている方法と違う方法がありうるのかや,理論上の裏付を再度考えるよいきっかけになりました。