月別アーカイブ: 2020年 5月

新型コロナウイルスと裁判の遅れによる影響

1 新型コロナウイルス関係と裁判の遅れ

新型コロナウイルスによる外出自粛要請で,テレワークになったり,休業になった方が大勢いらっしゃいます。

弁護士も打ち合わせにウェブ会議システムを使ったり,法律事務所の相談スペースや執務スペースの消毒を行う等,弁護士業務に大きな影響を及ぼしています。

外出自粛要請は,裁判所等の官公庁も例外ではありません。

裁判所の職員の出勤が減ったこと等で裁判所に提出した書類の審査が大幅に遅れたり,裁判が傍聴人を入れて行う関係で三密に近い状態になりかねず,裁判の期日が延期になっ

ている問題があります。

ここでは,裁判が遅れることで,個人や事業をされている方に生じる影響について検討します。

2 裁判を通じた取立が遅れる

取引先が約束したお金を払ってくれないとか,人に貸したお金を返してもらえないときには,裁判をした後に,取引先や貸した相手の財産を差押えする等して強制的に回収することができます。,

しかし,差押えは,基本的に裁判所を通じて行わなければならないため,裁判が遅れると,強制的に回収するのが遅れることになります。

裏を返せば,お金を借りたり,約束したお金を払えない取引先は,差押えを受けるリスクが,新型コロナウイルスの問題が浮上する前より低くなっているともいえます。

3 建物の明け渡しが遅れる

賃貸人が,賃料を払わない賃借人を強制的に出ていかせるためには,裁判をして明け渡しを認める判決をもらい,判決に基づいて明け渡しの執行をする必要があります。

新型コロナウイルス関係で,賃料を払えない事業者が多くいることが問題になっていますが,裁判をしても明け渡しを認める判決が長期間もらえないとなると,賃貸人側からす

ると,賃料を払わない賃借人に出て行ってもらって次の賃借人に貸すこともできず,非常に収益が悪化することになります。

裏を返せば,賃料を払えない賃借人側では,明け渡しの判決が出るまでは少なくとも強制的に退去させられないとすると,他の支払を優先することになりそうです。

4 まとめ

裁判を通じない交渉も,新型コロナウイルスの影響下では,対面で話すことが難しくなっていることによる影響がありえるので,一概に裁判を通さない方が

有利になっているとは言い切れません。

争いごとの解決には,通常より時間がかかることを考慮して,裁判を通じるか,話し合うか,話し合うにしても対面でない方法がとりうるか等,検討する必要があります。