自己破産は,裁判所(名古屋市にお住いの方であれば,名古屋地方裁判所等,お住まいを管轄する地方裁判所)に申請して,原則として全ての借金を払わなくてよくしてもらう手続きです。
個人再生は,裁判所に申請して,借金額を5分の1等に減額してもらって,3年から5年かけて返済する手続きです。
自己破産や個人再生では,返済ができないと思った時期がいつかが重要なポイントになります。
その理由は,大きく3つあります。
1 返済ができないと思った後は,新たな借入をしてはいけない
返済ができないと思ったのに,新たに借入をして,予想どおり払えなくなったとなると,最初から返す意思がなかったことになります。
最初から返す意思がないのに借入をすれば,詐欺罪に当たる可能性もあり,自己破産では免責(借金がチャラ)されない事由にあたり,個人再生でも,
裁判所が認可しない事由にあたります。
2 返済ができないと思った後は,一部の債権者だけ返済してはいけない
自己破産や個人再生では,全ての債権者への返済を平等にやめなければなりません。
一部の債権者だけ返済した場合,たとえば消費者金融には返済しないのに親から借りたお金だけ返済している場合は,破産であれば,破産管財人という弁護士が,
親に対して裁判等をして返済したお金を取り返すことになります。
本来お金に余裕があれば親に返済することは自由ですから,いつから返済してはいけないのか問題となります。
それは,法律用語では支払不能・支払停止,簡単にいえば,もう返済ができないと思った時期から後は一律に返済してはいけないと考えられています。
3 返済ができないと思った後は,無駄づかいをせずにお金の流れを管理しなければならない
同じギャンブルで借金がかさんだのでも,10年以上前にギャンブルをしていたが10年前からやっていない場合と,返済ができていないのに自己破産する直前までギャンブルをやっていた場合では,後者の方が,裁判所や債権者の見る目は厳しくなります。
お金に余裕があればギャンブルや趣味にお金を使うのも自由という余地がありますが,もう返済ができないのにギャンブル等で無駄づかいをすれば,そんな余裕があったらもっと返済できたはずといわれます。
自己破産であれば免責が難しくなり,個人再生でも裁判所が認可しない事由にあたることもあります。
4 返済ができない時期についての対応策
自己破産や個人再生では,裁判所から,いつから返済できないと思っていたかや返済の目途があったかをきかれます。
最終的に弁護士に自己破産や個人再生を依頼する方は,いつかの段階では返済できなくなったはずだからです。
先ほどまで書いたとおり,たとえば弁護士に依頼する3年前から返済できないと思っていたのであれば,ここ3年間に借りて返せなくなったものや,ギャンブル等の無駄づかい
は非難されやすくなります。
一方,弁護士に依頼する数日前まで,返済を続ける意思や目途があったといえれば,たとえば6ヶ月前に新しく借入をして払えなくなっても,非難はやわらぐでしょう。
弁護士に依頼する直前まで,親族の援助を得たり,収入を増やしたり,生活費を切り詰めたり,新たな借入先を探したりして,返済を続ける努力をしている方は
大勢いらっしゃいます。
このような事情を上手に引き出し,裁判所に対し,弁護士に依頼する直前まで借入を返済する意思や目途があったと説得できるかも,弁護士の腕の見せ所の一つです。
実際返済をやめてから長い時間たって弁護士に相談される方もいらっしゃいますので,それを弁護士に依頼する直前まで借入を返済する目途があったというのは,説得力がないケースもあります。
このように,どの程度であれば裁判所や債権者を納得させられるかの判断は難しいものがあります。
自己破産や個人再生を検討される方は,返済できないと思った時期や返済の目途について,よく弁護士と相談されることをお勧めします。