離婚後における婚姻費用分担請求

毎年4月中旬頃に、前年の重要判例解説という本が出版されます。弁護士である以上、判例(裁判所が実際に出した判決や決定)の移り変わりをフォローすることは重要ですので、毎年買うようにしています。

最新の重要判例解説にのっていた最高裁令和2年1月23日第一小法廷決定を紹介します。

申立人妻Xと相手方夫Yは、平成13年に婚姻して2人の子をもうけましたが、平成26年頃から別居状態になりました。

Yは平成30年1月頃まで月額15万円の婚姻費用を支払っていましたが、その後支払わず、平成30年7月に離婚が成立しました。

離婚が成立した後も、婚姻費用の分担請求が認められるかが争いになりました。

最高裁は昭和40年6月30日決定で、婚姻費用は婚姻中の夫婦の生活費を分担するものなので、離婚すれば婚姻費用の分担請求権が消滅するとしています。

最高裁昭和53年11月14日判決は、離婚後は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与を求めることができるとしていました。

そうすると、離婚後は婚姻費用ではなく財産分与でしか請求できないともとれます。

しかし、本決定は、婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するわけではない、夫婦の資産・収入その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が具体的な分担額を決定することは可能である等述べて、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、婚姻費用分担請求権は消滅しないと判示しました。

今回の最高裁決定により、婚姻費用分担審判中に離婚が成立した場合に、別途財産分与の請求をする必要はなく、婚姻費用分担審判の中で婚姻費用の請求をすることで、離婚成立前の婚姻費用の支払いを求めることができることが明らかになりました。

ただ、そもそも離婚前に婚姻費用を請求しておらず、離婚後に初めて離婚前の婚姻費用の分担請求ができるかは、最高裁は明らかにしていません。

離婚に伴って生活費の負担を求める場合の詳細な方法や手続きは、弁護士までおたずねください。