破産管財人との面談

1 破産管財人との面談が必要な場合

自己破産する際、破産管財人という依頼する弁護士とは別の弁護士が裁判所

から選ばれ、自己破産する方が面談に行かなければならないことがあります。

自己破産には、同時廃止と管財事件と2種類あります。

財産もなく、借金が増えた経緯にも問題がなければ同時廃止となり、破産管財人は選任されません。

20万円以上の財産があるとか、借金が増えた経緯に問題がある場合が、管財事件という破産管財人が選ばれるケースになります。

破産管財人が選ばれると、自己破産する方は面談に行く必要があります。

2 破産管財人との面談の流れ

まず、依頼した弁護士(申立代理人といいます。)を通じて、管財人の弁護

士と面談の日時を決めます。

持ち物は、管財人から指示があればそれに従いますが、一般的には最新記帳

した通帳、最新の家計の状況、車を所有している方は車の鍵、不動産をお持ち

の方は権利証等です。

面談の場所は、破産管財人の弁護士の事務所が多く、おおむね1~2

時間程度です。

面談は、初回は依頼した弁護士と一緒に行き、2回目以降は自己破産する方

だけで行くことが多いです。

管財人は、財産をお金にかえたり免責(借金をチャラにする)してよいか裁判所に意見を述べる立場なので、財産をお金にかえるのに必要な質問や、免責してよいか疑問に思う点を質問し、自己破産する方や依頼した弁護士がこれに回答します。。

当日回答できなかったことや、提出するよう指示されたことは、後日回答し

たり提出できるよう準備します。

また、管財人がつくケースは、自己破産する方宛ての郵便物が管財人に転送

されるので、郵便の受取方法を決めます。

3 管財人面談での対応

自己破産で免責を受ける(借金をチャラにしてもらう)ためには、管財人に求められた質問に回答したり資料を提出することが条件になります。

そのため、基本的に質問には正直に答え、資料の提出には素直に従うのですが、どうしても難しい場合は、一人で悩まず依頼した弁護士(申立代理人)に相談しましょう。

 

 

債務整理をしても自宅が残るか

1 債務整理の種類によって自宅がどうなるかは変わる

借金の支払いに困った方が債務整理を検討するうえで、お住まい(自宅)がどうなるかは、今後の生活の立て直しに非常に重要です。

自宅がどうなるかは、債務整理の種類によって変わります。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の大きく3つがあります。

任意整理は、お金を貸した業者と弁護士が、分割払いの話し合いをすることです。

個人再生は、裁判所に申請して借金を減額してもらう手続きです。

自己破産は、裁判所に申請して借金を基本的に0にしてもらう手続きです。

 

2 ご親族の所有又は第三者が借りている自宅であれば、どの方法でも今の自宅に住んでいられる

自宅は、大きく分けると、①親族所有の家(父の持ち家等)②第三者が借りている家(社宅や配偶者が借りている家)③ご本人が借りている家④ご本人が一部でも所有している家 の大きく4つに分かれます。

このうち、①と②は、債務整理のどの手続きをしても、今の自宅に住み続けることができます。

債務整理で最も自宅への影響が大きい自己破産でも、ご本人の財産がとられるだけで、保証人でない親や配偶者の財産をとるわけではないからです。

 

3 ご本人が借りている物件は、賃料を滞納していなければ住み続けられる

③のご本人が借りている物件も、基本的に今の自宅に住み続けることができます。

自己破産したことを理由に賃貸借契約を解除することは禁じられているからです。

ただ、賃料を滞納していると、債務整理をしたからではなく、滞納していることを理由に、賃貸人が退去を求めることもありますので、要注意です。

 

4 ご本人が所有している自宅は、自己破産では残らず、他の2つでは原則残る

ご本人が所有している自宅は、自己破産の場合は手放すのが原則です。

自己破産は、目ぼしい財産をお金にかえて債権者に分ける手続きだからです。

個人再生は、住宅ローンを約束どおり払うことで、自宅を残す道を開いています。

ただまれに要件を満たさない方がいるので、詳細は弁護士におたずねください。

任意整理は、基本的に住宅ローンの債権者を対象にしませんし、自己所有の場合も収入から返済できれば、自宅は残ります。

以上

任意整理と裁判

1 裁判を起こされても任意整理はできる

支払いが遅れて、消費者金融等の債権者から裁判を起こされたのをきっかけに、債務整理の相談に来られる方は大勢いらっしゃいます。

いきなり日が決められて、遠方の裁判所に行かなければならない・・

一括では払えないから、自己破産するしかないのではないか・・

様々な不安を抱えた方が来所されています。

しかし、裁判を起こされても、任意整理ができないわけではありません。

2 2ヶ月程度で話し合いをまとめる必要がある

消費者金融等が、払えていないお金の支払いを求める裁判は、証拠を残していないことはほぼありませんので、最終的には消費者金融等が勝訴する可能性が高いです。

消費者金融等は、勝訴すると、給料や預貯金を差し押さえて、強制的に取り立てることができるようになります。

そのため、任意整理で交渉する場合の消費者金融の立場は、裁判を起こす前よ

り強くなっています。

また、この種の裁判は、弁護士が受けても、2回目の期日には、結審となる可能性が十分あり、裁判を起こされてから2カ月程度の間に話合いをまとめ、あまり間を開けずにその債権者に対して支払いを始める必要があります。

それでも、弁護士に依頼すれば、遠方の裁判所まで行かずとも、話合いがまとまるケースが少なくありません。

3 裁判を起こされた場合は、お早めに弁護士に相談を

裁判を起こされて、相談するか迷っているうちに判決が出て、いきなり給料の差押等を受ける可能性もあります。

裁判所からの書類が届いた場合は、お早めに弁護士にご相談ください。

自己破産の申立てに必要な通帳の集め方

1 自己破産の申立てには、通帳等の資料が必要

自己破産は、裁判所に申請して借金を0にしてもらう手続きです。

借金を0にしてもらう以上、目ぼしい財産が残っていないことを証明しなければならりません。

裁判所によりますが、少なくとも破産申立て前1年分の預金通帳の動きが必要になります。

自己破産を申請する裁判所は、名古屋市内にお住いの方なら名古屋地方裁判所というように、お住まいを管轄する地方裁判所になります。

集める資料は、その裁判所のルールに従うことになります。

 

2 通帳がない場合や合計記帳がある場合は、入出金履歴を取り寄せる

通帳を過去1年分というと、まずはお持ちの通帳をATM機で記帳します。

ただ、過去の分を捨ててしまっていると、1年分まで残っていないことがありま すし、そもそも通帳が発行されていないケースがあります。

また、長い間記帳してないと、合計記帳といって、何十件分もまとまった金額しか通帳に表れないことがあります。

このときは、該当期間の入出金履歴を取り寄せる必要があります。

インターネット上の銀行のホームページからマイページにログインして、入出金履歴が出力できればよいのですが、1年前までさかのぼれないことも多いです。

そうすると、銀行の支店に問い合わせて取得することになります。

このとき必要な資料や来店が必要かは、銀行の支店の判断になります。

 

3 通帳を紛失している場合は、通帳を再発行した方が便利なことが多い

通帳を紛失している場合は、この機に通帳を再発行した方が便利な場合が多いです。

というのは、自己破産では、最新の状態を記帳して教えてくださいと複数回言われる可能性があります。

手続に半年程度かかる以上、日々変動する可能性があるからです。

そうすると、入出金履歴を取り寄せただけでは、何度も入出金履歴を取り直すはめになりかねず、ATM機で記帳できるようにしておく方が便利なことが多いです。

 

4 届出印を紛失している場合は、改印手続で来店が必要になることが多い

通帳再発行でも入手金履歴の取り寄せでも、支店に来店が必要な場合は、銀行届出印が必要であるのが通常です。

届出印を紛失している場合は、改印手続という銀行届出印を今持っている印鑑に変える手続きが先に必要で、それが終わってからしか通帳再発行や入出金履歴の取り寄せができないのが通常です。

改印手続と入出金履歴の取り寄せで少なくとも2回来店することになるのが通常ですので、スケジュールに余裕を持って資料集めをしていただくことをお勧めします。

時効の援用が成功しなかった場合の対応

1 時効の援用が成功しない場合

時効の援用は、最後の借入や返済から長期間経過したときに、法律上正しい方法で主張して借金の支払義務をなくす手続きです。

消費者金融やカード会社からの借入は通常5年ですが、判決や裁判上の和解があればそこから10年間経過しなければ、時効の援用は成功しません。

また,債務の承認(借金があることを認める言動)があれば時効の完成が猶予されるので、返済をしていなくても、債権者と話し合いをして支払の約束をすれば、時効の援用が成功しないことがあります。

 

2 時効の援用が成功しない場合の債務整理の手続きの選び方

時効の援用が成功しなければ、何もしないか、何らかの債務整理を選択することになります。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産と大きく3種類あります。

このうち、時効の援用が成功しなかった方が個人再生を選択することは稀です。

なぜなら、個人再生は、裁判所に申請して、借金を減額して3~5年間で返済する手続きで、裁判所が継続的に返済する能力があると認める必要があります。

時効の援用を試みる方は、長期間返済していない方ですから、長期間返済できていなかった方がなぜ今後は返済できるのか、裁判所を納得させることが難しいからです。

そうすると、債務整理の中でも、弁護士が債権者と分割払いの話し合いをする任意整理か、裁判所に申請して借金を0にしてもらう自己破産のどちらかを中心に検討することになります。

 

3 時効の援用が成功しなかった場合の任意整理の注意点

任意整理は、利息をまけてもらって元金だけの分割払いにしてもらうことが多いです。

しかし、時効の援用を試みた方は、長期間返済しておらず、利息や延滞金は多額になっているはずです。

それだけ債権者を待たせておきながら元金だけの分割払いはめったに認められません。想定しているより多い返済額になるのが通常です。

 

4 時効の援用が成功しなかった場合の自己破産の注意点

自己破産する場合は、長期間返済していない間のお金の使い道が問題になります。

たとえば、債権者に返済できなくなった後に入ったお金が、無駄づかいや親族への返済に使われていれば、自己破産しても免責されない(借金が0にならない)とか、親族だけ優先して返済した分を取り返す必要が生じることがあります。

 

5 このように、時効の援用が失敗した後の債務整理には特有の難しさがありますが、経験値のある弁護士であれば、何らかの解決をみることが多いでしょう。

詳細は弁護士までおたずねください。

法人の破産費用と代表者の破産費用の区別

1 法人の破産費用は、法人の財産から、代表者の破産費用は代表者の財産から用意するのが原則

会社経営をしている方から廃業の相談にのっているときに、会社と代表者の破産費用の用意の仕方がよく問題になります。

会社が破産する場合、代表者が会社の借入の連帯保証人になっていることが通常です。会社が破産すると、連帯保証人の代表者も一括請求されるので、破産せざるをえないことが多いです。

ただ、建前では、会社と代表者は別人格で、それぞれ破産するかどうか検討します。

会社の破産費用は会社の財産から、代表者の破産費用は代表者の財産から用意するのが原則です。

2 会社の財産を代表者の破産費用に充てないと費用が用意できない場合の対処法

実際、会社は売上が入ってくるので破産費用を用立てることはできるが、代表者は会社の運転資金に充てて個人資産がほとんど残っていないというケースも多いです。

このとき、費用が用意できないので代表者が自己破産できないとすると、代表者はやり直しの機会がなくなってしまいます。

そこで、代表者が会社からお金をもらって破産費用を出すことを正当化できる理屈が必要になります。

たとえば、代表者から会社への貸付金がある場合は、その貸付金を回収して代表者の破産費用に充てたり、代表者が役員報酬をもらえていなければ、役員報酬をもらって代表者の破

産費用に充てたと説明することを検討します。

3 無条件に会社の財産で個人の破産費用を用意してよいわけではない

個人資産から十分に破産費用が用立てられるのに、会社の財産から代表者個人の破産費用を出すのは問題があります。

会社の破産管財人という裁判所が選ぶ第三者的立場の弁護士が、代表者個人に損害賠償請求をしたり、代表者の破産手続で免責(借金をチャラにすること)が得られない可能性

もあります。

また、会社の債権者から横領罪にあたると主張される可能性もあるので、破産費用の用立て方は十分な注意が必要です。

詳細は、会社の破産に詳しい弁護士におたずねください。

ツイッターの記事の削除請求の判決

弁護士法人心の弁護士の岩橋です。

毎年1回、令和〇年度重要判例解説という、1年間で影響の大きい裁判所の判決や決定についてまとめた書籍が発売されます。

今回は、最高裁令和4年6月24日判決(民集第76巻5号1170ページ)を紹介します。

1 事案の内容

原告Xがツイッターで自身の氏名を入力して検索すると、X自身のツイッターではなく、Xが訴訟提起の8年前に建造物侵入罪で罰金刑に処せられた事案で逮捕された報道記事をリンクで紹介する複数のツイート(本ツイートという。)が表示される状態にあった。

報道記事自体は削除されていたが、Xは事件当時会社員で、訴訟提起時は父が経営する事業を手伝っており、配偶者に逮捕の事実を伝えていなかった。

Xは、ツイッター社(Y)を被告として、本ツイートを削除するよう求めて訴訟提起した。

2 判決

以下の理由でXの請求を認め、Yに各ツイートを削除するよう命じました。

⑴ XがYに対し、人格権に基づき本件各ツイートの削除を求めることができるか否かは、本件事実の性質及び内容、本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲とXが被る具体的被害の程度、Xの社会的地位や影響力、本件各ツイートがされたときの社会的状況とその後の変化など、Xの本件事実を公表されない利法的利益と本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、Xの本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができる。

⑵ Xの逮捕から8年が経過し、刑の言渡しが効力を失っていること、報道記事が既に削除されていること、本件ツイートは逮捕当日に速報する目的で行われ、長い間閲覧される予定のものでない一方、検索結果により事実を知らないXと面識のある者に事実が伝達される可能性が小さいとは言えないこと、Xが公的立場にないこと等から、Xの本件事実を公表されない法的利益が優越する。

3 8年たっても一般人の逮捕の情報がインターネット上のトップに上がっているのは、平穏な生活を送るのを難しくしているでしょう。

その記事を今更読みたい人が大勢いるとは思いがたいので、妥当な価値判断ではないかと思えます。

自己破産でローンのある車を残すための買い取り

1 自己破産すると、ローンが残っている車は引き上げられるのが原則

自己破産しても時価20万円以下の車は残るとよく言われますが、ローンが残っている車の場合は、別に考える必要があります。

自己破産する場合、車のローンも含めてすべての債務の返済をやめなければなりません。

車のローンを約束どおり払わなければ、ローン会社に所有権が残っていることが多いので、ローン会社に車を引き上げられてしまうのが原則です。

この場合、時価が20万円以下であっても、車のローン会社が引き上げると決めれば返還しなければなりません。

2 ご親族が車のローンを完済することは可能

自己破産する場合に返済をやめなければならないのは、自己破産する本人です。

自己破産しない親族等が車のローンを援助することは法律上可能です。ご親族が一括で車のローンを払えば、ローン会社に車を引き上げられることはありません。

ローン会社が引き上げなければ、車の時価が20万円以下であれば、基本的に自己破産する方の名義のままでも手元に残せることになります。

3 車のローン残額と車の時価に注意が必要

自己破産する方の名義のままでは、親族がローンを完済しても、車の時価が20万円以上であれば、手元に残らないことになりかねません。

そこで、お金を払ってくれた親族に車を買い取ってもらったことにして、名義変更することが考えられます。

ただし、この方法は、車のローン残額が車の時価より多い場合でないと、破産法上問題があります。

たとえば、車のローン残額が100万円、車の時価が60万円なら、相場が60万円の車をご親族が100万円で買い取ったことになるので、問題ないと考えられます。

一方、車のローン残額が40万円で、車の時価が60万円なら、相場が60万円の車をご親族が40万円で買い取ったことになり、問題があります。

破産法は、時価より安くで財産を処分することを禁止しているので、破産管財人という裁判所が選ぶ弁護士に車を取り返されたり、借金がチャラにならない(免責不許可)の

リスクがあります。

4 まとめ

ローンが残っている車の買い取りには、法律上難しい問題がありますので、自己破産に詳しい弁護士に相談してから実行するようにしましょう。

資力がない相手から取り立てる難しさ

弁護士がよく受ける相談に、友人に貸したお金を返してもらえない、取引先に売掛金を払ってもらえないから回収してほしいというものがあります。

貸したお金や売掛金は、債権なので、弁護士の業界では、債権回収という分野になります。

債権回収は、大きく次の三段階に分かれますが、それぞれに難しさがあります。

1 払うよう催促する

弁護士が依頼を受ければ、まず、相手方に、100万円貸したけれど返してもらっていないから1週間以内に全額振り込んでくださいといった文書を送ることから始めます。

催促するだけで払ってくれれば、最も時間も費用もかからないからです。

この文面をどう工夫するかで、相手方が支払いに応じるかどうかが変わることもありますし、相手から連絡があった場合の対応も弁護士の力量が問われます。

2 裁判を起こして判決を取る

弁護士が催促しても払う気配がない相手には、裁判を起こして判決をとろうとします。

たとえば100万円の貸金返還請求をし、相手方が裁判所に出頭してこなければ、訴訟準備から考えても2ヶ月程度で判決が出ることが多いでしょう。

ただ、相手方が合理的な反論したり、証拠が不十分な点があると、半年以上かかることもあります。

3 財産を差し押さえる

判決を取った後は、相手の財産を差し押さえて強制的に取立てをします。

しかし、相手の情報がなければ、差押えをしても取立てできないことが珍しくありません。

相手の勤務先が分かっていれば給料の差押えが、事業者で取引先が分かっていれば売掛金の差押えが考えられます。

そういう情報がないと、預金の差押えや現金の差押えになりがちですが、基本的に銀行口座のある支店名まで当たらないと、差押えができません。

自宅や会社の事業所にある現金の差押えでは、取れる金額はわずかでしょう。

相手が不動産を持っている場合でも、既に銀行等の抵当権がついていて、売ってもお金がもらえないケースが多いです。

4 貸したお金が数十万円の場合、弁護士に依頼して2の裁判や3の差押えまでやると、費用倒れになることが多いでしょう。

このように、債権回収は、相手の財産や収入に関する情報が少ないと困難になりがちです。

普段から企業間取引では、取引先の情報を集めておくことの重要性が強調されるゆえんです。

自己破産と個人再生の違い

1 自己破産と個人再生はどちらも裁判所を通じてする借金の整理の手続き

弁護士として借金の整理の相談をお受けしていると、自己破産と個人再生は何が違うのかとよく聞かれます。

実際この2つは似ている点も多く、以前、依頼者さんでもどちらの手続きを依頼しているのか分からなくなっていた方もいらっしゃいました。

ここでは、自己破産と個人再生の違いを大きな点にしぼってお伝えします。

2 借金を返さなくてよくなるのが自己破産、借金を少しは返す必要があるのが個人再生

一番分かりやすい違いは、自己破産では借金は基本的に0になりますから、手続きを依頼して以降、借金の返済はしなくてよくなります。

一方個人再生は、借金は5分の1など大きく減るものの、0にはなりません。3年から5年かけて返済しなくてはなりません。

このため、個人再生の裁判所での手続きが終わっても、減った借金が払えなくなれば解決になりません。

借金と縁を切って早く楽になりたいと思えば自己破産がよいということになります。

3 持ち家が残らないのが自己破産、自宅が残るのが個人再生

もう一つ大きな点は、自己破産は目ぼしい財産がなくなってしまうことです。

持ち家は典型的ですし、時価20万円以上の車や生命保険がなくなることもあります。

一方の個人再生は、持ち家を住宅ローンを払い続けて残すためによく使われます。

車もローンを完済できていれば残りますし、解約すれば大きな金額が返る保険も残すことができます。

このため、残したい資産がある方が個人再生を選ぶ傾向にあります。

4 借金が増えた経緯が悪いとできないのが自己破産、借金が増えた経緯が悪くてもできるのが個人再生

自己破産は、借金を返済しない以上、借金が増えた経緯という過去の出来事が非常に重視されます。

ギャンブルや投資の失敗が主な原因で借金が増えた方は、自己破産しても免責されず、借金が残ったままになることがあります。

一方個人再生は、借金が増えた経緯よりも今後返済していけるかという将来の見込みが重視されます。

ギャンブルや投資の失敗が主な原因でも、今後ギャンブル等をせず、収入の範囲内で返済できれば手続きは認められます。

このため、借金が増えた経緯が悪い方は、個人再生を選ぶ傾向にあります。