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不動産の任意売却と弁護士の関与

1 債務整理と不動産の任意売却のすすめ

債務整理をする中で、不動産を売却する機会がよくあります。

自己破産するなら、基本的に破産する方名義の不動産は手放さなければならないですし、不動産を売ったお金を債務整理の返済原資にすることもあります。

債務整理をする中で不動産を売却する場合、任意売却と競売(けいばい)の2つの方法があります。

競売は、住宅ローン債権者などが裁判所に申し立てて強制的に不動産を売る手続きです。

債務整理する方は、競売であれば裁判所の職員等が建物内を見に来るときに立ち会うこと、売却終了までに引っ越すことだけすればよいので、手間は少ないです。

ただ、任意売却という自身で不動産業者を通じて売りに出した方がよいケースが多くあります。

2 任意売却が競売よりメリットがあるケース

一つは、不動産を売れば住宅ローンが完済できる可能性がある場合です。少しでも高く売れれば手元にお金が入ってきますので、債務整理の返済原資や弁護士費用に充

てたり、不足している生活費にあてるなど有効活用できます。

競売になれば、競売の費用(最低70万円程度)を負担しなければならず、手元に残るお金が減ります。

二つ目は、近隣住民に知られたくない場合です。

競売は、インターネットに情報がのるので、誰でもどの不動産が競売されているか見ることができます。これを見た不動産業者が自宅を訪ねてくることも多いです。

任意売却であれば、普通に引越しして自宅を買い替える人と同じように売買するので、近隣住民に債務整理していることを知られずに済みます。

三つ目は、スケジュールを調整したい場合です。競売は、債権者が申し立てるので、スケジュールを調整することは困難です。任意売却なら、自身で売りに出すので、引越のタイ

ミング等をある程度調整できるのです。

3 任意売却に弁護士が関与するメリット

任意売却は、ご自身で不動産業者を選んで最後まで進めることもできます。

ただ、債務整理の一環で任意売却する場合は、2つの理由から、弁護士が関与する方がよいです。

一つは、債権者や裁判所は、不動産をなぜその金額でその相手に売ったのか説明を求めてきます。売買の過程から債権者に説明する弁護士が関与すれば、債権者への説明も適切

になり、債権者との交渉の成果も上がりやすくなります。

二つ目は、不動産を売ってもローンが残るケースでは、弁護士が入るか任意売却に特化している不動産業者が交渉するのでなければ、そもそも不動産が売れません。

住宅ローン債権者にローンが残るのに担保を外してもらうには、独特の交渉が必要になりますから、不動産業者選びの段階から弁護士と不動産業者が連携する方が成果が出ます。

不動産競売と破産者の相続人の不動産買い受け

1 事案の概要

住宅ローンが払えなかったり、自宅を事業性の借入金の担保に入れている場合、破産に伴って不動産が競売されることがよくあります。

競売のルールを定める民事執行法では、不動産競売で、債務者(お金を借りて払えなかった本人)が競売不動産の買い受けの申出をすることは禁止しています(民事執行法68条、188条)。

ここで、競売手続中に債務者が破産の免責決定を受けた後に亡くなり、相続人が買い受けの申出をすることが許されるか争われた最高裁の判決があります(最高裁令和3年6月21日第一小法廷判決)。

2 最高裁は、以下の理由で、相続人が買い受けることを認めました。

⑴ 民事執行法が債務者自身の買い受けを認めない理由は、債務者は不動産の買い受けより債務全額の完済を優先すべきである、債務者が不動産を買い受けても債務を完済しない限り同一の債権者がもう一度競売申立てをする可能性もあること等にある。

⑵  免責許可決定を受けた場合、相続人は被担保債権を弁済する責任を負わず、不動産の買い受けより債務全額の完済を優先すべきとは言えない。

⑶ 相続人が買い受けの申出をする必要性はある一方、もう一度同一の債権について競売申立てが行われることはない。

3 評価

最高裁判所は、民事執行法68条の「債務者」に破産者の相続人は当たらないという解釈をしたことになります。

相続人が、同居の配偶者か子であるなら、たまたま債務者が亡くならなければ、問題なく不動産を買い受けて自宅に住み続けられたはずです。

それを、債務者の地位を相続してしまったために不動産の買い受けができなくなって自宅に住み続けられないのは酷に思えます。

破産で免責されているわけですから、そもそも債務者(お金を払う義務があるもの)といえるのかも疑問ですので、この最高裁の判決は妥当に思えます。

実際、自己破産のご相談に来られる方で、ご親族に自宅を買い取ってもらって住み続けることを希望する方は大勢いらっしゃいます。

不動産競売でなくても任意売却で親族に自宅を買い取ってもらう方法も考えられますので、お気軽に弁護士までおたずねください。