弁護士会照会

弁護士が証拠を集める手段として,弁護士会照会という制度があります。

弁護士は,どこかの都道府県の弁護士会に所属しています。

弁護士法23条の2には,次のように定められています。

弁護士は,受任している事件について,所属弁護士会に対し,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。

弁護士会は,前項の規定による申出に基き,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

つまり,弁護士会が,所属する弁護士が依頼を受けている事件について,資料を提供したり質問に答えてほしい企業や役所に対して回答を求める制度です。

弁護士会照会は,法律に基づくもので,照会を受けた企業や役所は,原則として回答する義務があると最高裁判所も認めています。

たとえば,愛知県弁護士会に所属する弁護士Aが,Bさんから,Cさんに貸したお金を回収する依頼を受けました。

A弁護士は,Cさんに対し,貸金返還請求訴訟を起こして勝訴判決を得ました。

Bさんが,Cさんの財産がどこにあるか把握していない場合,強制的にCさんの財産をお金にかえて取り立てるためには,Cさんの預金口座がどこにあるか把握できると効果的です。

そこで,A弁護士は,D銀行に対し,Cさんの預金口座があるか,ある場合は,口座番号や残高を照会したいと考えます。

A弁護士は,愛知県弁護士会に申し出て,所定の手数料を支払い,愛知県弁護士会が審査して問題ないと認めれば,愛知県弁護士会が,D銀行に対し,Cさんの預金口座があるかや,口座番号,残高を回答してほしいという照会をします。

これが弁護士会照会です。

D銀行がA弁護士に,Cさんの預金口座の口座番号等を回答すれば,A弁護士は,CさんのD銀行の預金口座を差し押さえることで,強制的にCさんの財産からお金を取り立てることができます。

このように,弁護士会照会は,強力な制度ですが,D銀行が,Cさんの個人情報に関わるからと回答を拒否することもあります。

実際に,銀行の本店に問い合わせをしたときに,支店分も含めて回答がされる銀行は,一部に限られています。

しかし,裁判所が判決で,BさんがCさんにお金を貸したが返済を受けていないと認めているにもかかわらず,D銀行が回答を拒否した結果,Bさんが貸したお金をとりたてられないのも問題がありますから,運用の改善が必要とも考えられます。