資力がない相手から取り立てる難しさ

弁護士がよく受ける相談に、友人に貸したお金を返してもらえない、取引先に売掛金を払ってもらえないから回収してほしいというものがあります。

貸したお金や売掛金は、債権なので、弁護士の業界では、債権回収という分野になります。

債権回収は、大きく次の三段階に分かれますが、それぞれに難しさがあります。

1 払うよう催促する

弁護士が依頼を受ければ、まず、相手方に、100万円貸したけれど返してもらっていないから1週間以内に全額振り込んでくださいといった文書を送ることから始めます。

催促するだけで払ってくれれば、最も時間も費用もかからないからです。

この文面をどう工夫するかで、相手方が支払いに応じるかどうかが変わることもありますし、相手から連絡があった場合の対応も弁護士の力量が問われます。

2 裁判を起こして判決を取る

弁護士が催促しても払う気配がない相手には、裁判を起こして判決をとろうとします。

たとえば100万円の貸金返還請求をし、相手方が裁判所に出頭してこなければ、訴訟準備から考えても2ヶ月程度で判決が出ることが多いでしょう。

ただ、相手方が合理的な反論したり、証拠が不十分な点があると、半年以上かかることもあります。

3 財産を差し押さえる

判決を取った後は、相手の財産を差し押さえて強制的に取立てをします。

しかし、相手の情報がなければ、差押えをしても取立てできないことが珍しくありません。

相手の勤務先が分かっていれば給料の差押えが、事業者で取引先が分かっていれば売掛金の差押えが考えられます。

そういう情報がないと、預金の差押えや現金の差押えになりがちですが、基本的に銀行口座のある支店名まで当たらないと、差押えができません。

自宅や会社の事業所にある現金の差押えでは、取れる金額はわずかでしょう。

相手が不動産を持っている場合でも、既に銀行等の抵当権がついていて、売ってもお金がもらえないケースが多いです。

4 貸したお金が数十万円の場合、弁護士に依頼して2の裁判や3の差押えまでやると、費用倒れになることが多いでしょう。

このように、債権回収は、相手の財産や収入に関する情報が少ないと困難になりがちです。

普段から企業間取引では、取引先の情報を集めておくことの重要性が強調されるゆえんです。