カテゴリー別アーカイブ: 債務整理

経営者保証ガイドラインと特定調停

1 特定調停とは

返済が困難になりそうな個人の方が、簡易裁判所に申し立てて、裁判所が選ぶ調停委員等に仲介してもらい各債権者(消費者金融、銀行、カード会社等)と話し合いで借金の整理をする手続きです。

過払い金が多く発生していた頃は、弁護士に依頼せずご自身で申し立てて借金の整理をする方もいましたが、現在は過払い金がほとんど発生せず、任意整理(裁判所を通さず各債権者と話し合いをする)に比べてデメリットが大きいでしょう。

たとえば、裁判所で手続きするので手間がかかりますし、払えなければすぐに差押えされる状態になります。

債権者間の平等が原則なので、最も短い返済期間しか認めないところに合わせなければならなくなりがちです。

このため、消費者金融やカード会社相手にやるケースはほとんどなくなっています。

ただ、平成26年以降、経営者保証ガイドラインができてからは、会社代表者など、会社の借入の保証人になっている方の借金の整理の方法として注目を集めています。

2 経営者保証ガイドラインでは特定調停の申立てが推奨されている

経営者保証ガイドラインは、会社の借入の保証人になっている方(会社代表者や取締役等)が、会社が破産や民事再生したときに一括請求を受ける保証債務について、各債権者

(信用保証協会や銀行等)と話し合いをして、借金の元本を減らしてもらうものです。

通常の話し合いでは元本を減らしてもらうのは困難ですが、経営者保証ガイドラインを使うと、大幅に元金を減らすことができます。

ただ、債権者は税務上損金処理ができないと困るので、特定調停で裁判所のお墨付きを得ることが必要になるのです。

3 特定調停の進め方

弁護士を通して経営者保証ガイドラインの話し合いを各債権者の担当レベルではOKをもらっておきます。

弁護士が簡易裁判所に特定調停の申立てをして、裁判所に経営者保証ガイドラインの要件を満たすこと等を確認してもらい、第1回目の裁判期日で調停が成立するのが順調な流れ

です。

ご本人は裁判所に出頭する必要がないのが通常ですので、会社代表者で保証債務以外にほぼ借金がないという方は、検討してみるとよいでしょう。

 

住宅ローンが払えないときの対応

1 住宅ローン会社で支払額を見直す

収入が減って住宅ローンが払えなくなる方の相談はよくあります。住宅ローン以外にほとんど借金がない方の場合、最初に考えるのは住宅ローン会社に相談することです。

借り換えで返済期間が長くならないかや、ボーナス払いをならしたり、返済期間を延ばすことで、支払額が減って資金繰りがつくケースもあります。

2 住宅ローン以外の借金の任意整理やおまとめローン

住宅ローン以外や車のローン以外の借金が数百万円あるなら、住宅ローン以外の借金の返済額を減らす方が効果的なことが多いです。

住宅ローン以外の借金は、利率も高く、借入額の割には返済額が大きく設定されていることが多いからです。

おまとめローンが組めて、返済先が一本化できて、金利も下がり、返済額も減るなら一つの解決になります。

ただ、おまとめローンで一部しかまとめられないケースや、返済額が減らないケースも多いです。

任意整理という、弁護士等の専門家を通した分割払いの話し合いなら、金利を0に近づけて毎月の返済額もおおむね5年(60回)払い程度まで減ることが多いです。

3 個人再生

住宅ローン以外の借金がかなり多くなると、分割払いの話し合いでは支払いきれなくなり、個人再生という裁判所でやる手続きを検討します。

住宅ローンは約束どおり支払い続けて自宅を残し、それ以外の借金はおおむね5分の1まで減るので、住宅ローン以外の借金の負担は大きく軽減されます。

4 不動産の任意売却やリースバック

住宅ローン以外の借金が少なく、自宅を手放してもよいと思える場合は、自宅を任意売却するのがよいでしょう。

住宅ローンを完済できないと売れないという不動産業者等もいますが、実際は住宅ローンの会社が担保を外してくれれば売れるので、住宅ローンの残額を下回っても売れる場合が

あります。

また、自宅に住み続けたいが自宅の所有にこだわらない方なら、リースバックという、自宅を不動産業者に売って一時的に現金を得て、賃料を払って住み続けるケースもありま  す。

5 自己破産

どうやっても住宅ローンが払えない場合や、離婚等で持ち家を維持するメリットがなくなっている場合は、自己破産するのが最も楽になる方法です。

自宅は手放すことになりますが、借金はゼロになって、収入があれば少しずつ貯金できるようになるでしょう。

司法修習生と倒産実務修習の講師

1 司法修習生とは

司法修習生は、司法試験に合格して、弁護士、検察官、裁判官になるための研修を受けている人をいいます。

私も10年以上前ですが、司法修習生として弁護士事務所、裁判所、検察庁、司法研修所で研修を受けました。

私が修習生のときは給料が出ていましたが、一旦司法修習中の生活費が貸与される(返還義務がある)形になり、2025年現在は月額約15万円の給付金が出るそうです。

2 司法修習中に倒産事件を経験するとは限らない

司法修習生は、修習中に、刑事事件と一般的な民事裁判は経験します。

二回試験という、司法修習を終えた後の試験に合格しないと弁護士、裁判官、検察官になれないのですが、この試験科目に刑事事件と民事裁判があるからです。

また、検察庁では刑事事件しか取り扱っていませんので、刑事事件は修習生は誰もが複数見ることになります。

倒産、交通事故、相続等の案件は、修習に行った弁護士事務所や裁判所で行われてるのを見るケースもありますが、配属される弁護士事務所や裁判所によっては見ることができないケースもあります。

修習中に経験する機会がなければ、弁護士になってから研鑽を積むほかありません。

3 倒産実務修習

先日、愛知県弁護士会の倒産実務委員会が主催する倒産実務の修習で、他の講師と一緒に修習生のゼミの講師をする機会に恵まれました。

修習生や他の講師(弁護士)と一緒に、個人事業者の自己破産や、サラリーマンの個人再生の架空の案件を題材に、どのように実務で対応するか議論するものです。

今年でこの講師も4年目になりますが、実務の世界でも答えが出ていない悩ましい問題もあり、他の弁護士がどう対応しているかきいたり、実務にはついていないものの理論は

勉強している修習生の疑問点に回答しようとすると、自分はなぜこういう対応をしてきたのだろうかと振り返る良い機会になります。

自己破産は件数も多く、経験している修習生も多かったですが、個人再生は経験している修習生は少なかったです。

債務整理を数多く扱っている事務所に所属しているからこそ、日々経験できるものも多いと感じます。

連帯保証人の時効の援用

1 会社の借入の連帯保証人も時効の援用は可能である

最後の借入又は返済から5年以上たつと、時効にかかって借金を返さなくてよくなるというのが消滅時効です。

時効は、援用といって法律上正しく主張しなければ効果が発生しないので、弁護士に依頼して時効の援用をしようという方は少なくありません。

会社の取締役だった方が、会社の借入の連帯保証人であるケースはよくあります。

連帯保証人が時効の援用をすることは可能です。ただ、ご自身で借りた場合と違う独特の注意点があります。

2 主債務と保証債務のどちらの時効の援用も可能である

法律上、借入をしている会社を主債務者、会社の借金を主債務、代表者やご親族が連帯保証しているのを保証債務といいます。

連帯保証人は、主債務の時効の援用もできるし、保証債務の時効の援用もできるのが基本です。

これが生きるのは、たとえば連帯保証人が保証債務について承認すると、保証債務は承認してから5年間は時効にかかりません。

しかし、主債務はそれにかかわらず時効が進むので、最後の借入や返済から5年たてば、連帯保証人が主債務の時効を援用することで借金を払わなくて済むようになる可能性があ

ります。

3 主債務の時効がのびていると、保証債務の時効ものびているケースがある

たとえば主債務者の会社に対して裁判が起こされると、主債務だけでなく保証債務の時効ものびてしまいます(民法457条1項)。

主債務者が敗訴して判決が確定すると、時効の期間は判決確定から10年にのびます。この結果、保証債務の時効も判決確定から10年間にのびてしまいます。

また、主債務者が借金を承認すると、主債務だけでなく保証債務も承認から5年間は時効にかからなくなります

このように、連帯保証人からすると、あずかり知らないところで時効の期間がのびているケースもあるので、注意が必要です。

4 まとめ

保証人が時効の援用をするときは、主債務者に対するアクションによって時効が成立するか変わるケースも多いです。

保証債務の時効を援用するのか、主債務の時効を援用するのかも含めて、弁護士にご相談ください。

会社が破産する場合の経営者保証ガイドラインの特徴

1 経営者保証ガイドラインとは

以前は、会社の代表者は、会社が倒産するときには自己破産するケースが大半でした。会社の代表者は、会社の連帯保証人になっており、保証債務を支払わなければなりませんが、 完済できるだけの資力が残っていないケースが多いためです。

しかし、自己破産すると、信用情報が事故登録されて今後の融資は見込めなくなりますし、自宅やめぼしい資産は手放すことになるため、会社を廃業するハードルが高くなり、代表者の経済的な立ち直りも難しくするという問題がありました。

そこで、金融庁等が銀行や信用金庫などの連帯保証人をとる金融債権者に対して、代表者との話し合いで、一定の資産を残すことを認めつつ債務を免除する基準を設けたのが、経営者保証ガイドラインです。

2 自宅等の資産を残せるケースが多い

経営者保証ガイドラインでは、華美でない自宅を残すことを認めており、住宅ローンのある自宅では、住宅ローンを払い続けて自宅に住み続けることも認めています。

解約して99万円を超える生命保険や99万円以上の預貯金も、自己破産では基本的に残りませんが、経営者保証ガイドラインでは、法人の配当が増えた等一定の場合に残すこ

とを認めています。

3 減額の対象となる全債権者の同意が必要

ただ、経営者保証ガイドラインは、あくまで話し合いなので、1社でも減額に反対する金融機関があれば成立しないのが原則です。

粉飾決算や代表者個人の浪費がある場合、不適切なお金の流れがある場合等は、同意しない確率が高まります。

4 代表者個人の借入や、金融機関以外の保証債務は対象外

また、代表者個人が会社の運転資金に充てるためにカードローンを使ったり、クレジットカードで買い物した分は、保証債務ではないので、経営者保証ガイドラインの対象外で

す。

賃貸借契約の保証人や取引先の保証人になっているものも、ガイドラインは使えません。

これらは基本的に全額支払う必要があるので、金融機関以外の保証や代表者個人の借入が相当額ある場合は、ガイドラインを使うのをあきらめざるをえないのが通常です。

5 このように、経営者保証ガイドラインは使えないケースも多いですが、自宅や目ぼしい資産を残したい場合には、活用する価値があります。

会社の破産では、早期に破産したことで会社の配当が増えたことが、多くの個人資産を残すことにつながりますので、早めに弁護士に相談することが肝心です。

 

事業が続けられるかの見極め

1 事業が続けられるかを見極めるポイント

事業再生にたずさわる弁護士のもとには、何とか事業を続けたいが資金繰りが厳しいという代表者の方が毎月何人も相談に来ます。

事業が続けられるかは、事業形態や権利関係によるところもありますが、弁護士が簡単に見極めるポイントとして使っているものをお伝えします。

2 事業に不可欠な経費の支払いができるだけの現金預金があること

たとえば仕入をして売る業種では、仕入代が払えず仕入ができなければ、事業として成り立ちません。

従業員が店に立ってくれなければできない業種で、給料が払えないなら、事業を続けることはできません。

金融機関への返済額は、弁護士が入って調整することもできますが、事業に不可欠な経費の支払いができなければ、事業は続けられません。

そのため、給料や大きな仕入代の支払日に、支払いに必要なキャッシュ(現金預金)が残っている必要があります。

よく資金繰りの相談に行くと、会社の資金繰り表を作るよう言われるのは、入金が後で支払いが先だと、たとえ黒字でも支払いができなくて事業が続けられないケースがあるからです。

3 返済をしなければ黒字にもっていけるか

赤字であっても、現金預金が残っている限りは事業が続けられるといいます。

ただ、弁護士のところに事業再生の相談に来られる会社は、現金預金が少なくなっており、かつ赤字の会社が多いので、赤字が数カ月続くだけで現金預金がなくなりそうなケー

スが多いです。

すると、赤字から黒字になるプランを数カ月で実行しなければなりません。

どこまで黒字になればよいのかというと、最低限は返済を0と仮定した場合の黒字です。

事業を続ける以上、一旦返済を止めることはできても将来的に返済できる見込みがないと、事業を再生したり借金を減額してもらうことはできません。

4 投じられる個人資産や融資も検討

主には2と3が事業を続けられるかの簡単な目安になりますが、補助的には、現金預金以外に、現金化しやすそうな会社又は代表者個人の資産がないか、代表者個人も含めて融

資を受ける余地がないか検討します。

たとえば解約してお金が返ってくる保険、活用できていない車両の売却等で現金が手に入れば、仕入代や人件費に充てられます。

ただ、借りた直後に資金繰りができなくなって倒産すると、計画倒産とか返済する意思がないのに借りたとして詐欺罪に問われる可能性もありますので、融資は慎重に検討しま

しょう。詳細は事業再生に強い弁護士にご相談ください。

 

遺産分割と破産

1 遺産が残っていれば自己破産でお金にかえなければならない可能性がある

亡くなったお父様の遺産が残っている方が自己破産する場合、遺産はどうなるでしょうか。ここでは、令和6年1月1日にお父様Aが亡くなり、ローンが残っていない自宅の不動産を所有していました。ご存命のお母様をB、破産する方をCとしてみます。

Aの財産は、何もしなければ、Bが2分の1、Cが2分の1ずつ共有していることになります。

Cが自己破産する場合、A名義の不動産の2分の1をお金にかえなければならないのが原則です。

2 破産申立前に遺産分割しても否認権行使の可能性がある

では、Cが自己破産を依頼する前に、Aの遺産を全部Bに相続させるという遺産分割協議をして、B名義で登記した場合はどうでしょうか。

この場合、不動産は形式的にはCの財産ではありません、

しかし、破産の直前に財産を他の人に全部タダであげてしまうのは、財産隠しの一種になり、否認権行使といって裁判所が選んだ破産管財人から取り返されて現金化される可能性もあります。

ただ、これには、遺産分割と単なる贈与を同視すべきではなく、遺産分割協議が民法906条が掲げる事情と無関係に行われ、遺産分割に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事情がある場合にしか無症候否認の対象にならないという裁判例(東京高等裁判所平成27年11月9日判決)もあるところですから、なぜ自分の取り分がなく全部母名義にするのかについて合理的な説明がつくかどうかも重要になります。

3 相続放棄

破産申立てする弁護士としてこの問題を解決するには、Cが相続放棄ができないか検討するでしょう。

相続放棄は一身専属性があり、詐害行為にならないという最高裁判例があるからです。しかし、相続放棄は亡くなったことを知ったときから3ヶ月以内に行わなければならない

のが原則なので、先の例では令和6年4月1日までしか行えない可能性があります。

4 個人再生

破産でなく個人再生の場合も同様の問題が生じますが、個人再生では実際に相続財産を換価するのでなく、清算価値に計上して返済すれば足ります。

つまり、返済額は増えるが、自宅をお金にかえる必要はないということです。そこで、返済能力があるなら、Cが自己破産でなく個人再生を選択することも検討すべきでしょう。

連帯保証人の債務整理について

1 連帯保証人とは

連帯保証人とは、主債務者(実際お金を借りた人)が約束どおり払わない場合に備えて、一緒に支払義務を負う人です。

法人の借入で法人代表者が、奨学金で奨学生の親が保証人になっているケースが多いです。

2 保証の契約書に記名や押印があれば、基本的に支払義務はある

連帯保証人の方には、主債務者が勝手に保証人欄に書いたから払わないと主張する方もいらっしゃいます。

しかし、基本的に保証の契約書に、保証人の名前が書いてあって、印鑑が押してあれば、保証人自身の意思に基づいて保証したと推定されますので、積極的に別人が全く

保証人の了承なく署名・押印したことを立証できなければ、全額の支払義務を負います。

お金を貸す銀行等の債権者も、保証人の意思確認には注意を払っているので、署名・押印したのが別人でも、別人から保証人に話がいって了承をしている、つまり保証人を代理し

て署名・押印したものと認定されるのが通常でしょう。

そのため、書面があるのに保証契約自体を否定するのは、ほとんどのケースで通用しません。

3 分割払いの話し合いがもっともよくある解決

連帯保証人は、主債務者の支払いが遅れている場合、全額一括で支払わなければなりません。

連帯保証人が債権者と分割払いの話し合いをすることは、通常可能なので、一括払いが難しい場合は分割払いで解決するケースが多いです。

一括で支払う額を減らしてもらうという交渉もありますが、利息や遅延損害金はまけてもらえても、元金が減ることはまれです。

4 法人のの借入の保証人は、経営者保証ガイドラインを検討することも

例外的に大幅に保証債務が減る可能性があるのは、経営者保証に関するガイドラインが成立した場合です。

これは、法人の保証債務しか借金がない場合に、全金融機関の同意が得られれば、保証債務が大きく減ります。

ただ、法人が自己破産等の手続きをしていることが条件になる等、使えないケースもありますので、詳細は弁護士にご確認ください。

5 保証人が個人再生や自己破産することもある

分割で支払うのも難しい場合は、保証人自身が自己破産すれば、保証債務を支払わなくてよくなります。

個人再生という、裁判所に申請して、保証債務を5分の1から10分の1程度に減らして、3年から5年分割で支払う方法もあります。

法人代表者の個人再生

1 法人代表者が個人再生を選ぶメリット

個人再生は、裁判所に申請して借金を減額してもらい、3年から5年で返済する手続きです。

法人の代表者は、法人の資金繰りに困った場合、自己破産したり、分割払いの話し合いをされる方が多いです。

しかし、自己破産の場合は、持ち家を手放さなければなりませんし、法人の役員を一旦退任しなければなりません。

分割払いの話し合いで払っていける負債額ならよいのですが、数千万の負債になると、分割払いで払いきるのは困難になります。

個人再生では、裁判所で借金を5分の1や10分の1に減らしてもらえば、役員をやめることなく、自宅も残して借金の負担を軽くすることができます。

2 法人代表者の個人再生の難しさ

ただ、個人再生は、サラリーマンを主な対象とする手続きであり、法人代表者には独特の難しさがあります。

第1に、法人に対する貸金や出資持分の処理の問題です。

個人再生では、少なくとも持っている財産全額分は、返済しなければなりません。

たとえば、1000万円の負債がある法人代表者が、法人に300万円貸し付けており、法人の株式(出資持分)を100万円有していれば、400万円の財産を持っているこ

とになります。

すると、最低400万円を返済しなければなりません。

第2に、法人代表者の収入の不安定さです。

個人再生は、借金を減らせば安定して返済できることが認められる条件です。

役員報酬が約束どおりもらえて、役員報酬から生活費を引いても余剰が出ていれば、安定して返済できるのですが、実際は役員報酬がもらえていないケースが多々あります。

収入が安定しないと、借金を減らしても返済できないと判断されて、手続きが認められない可能性があります。

3 まとめ

法人代表者の個人再生は、事業を続けながら借金を減額できる有効な手続きですが、経験豊富な弁護士でなければ、返済額がほとんど減らなかったり、手続きが認められない可

能性が十分あります。法人の債務整理や法人代表者の個人再生に詳しい弁護士に十分相談して方針を決めるのがよいでしょう。

 

中小企業活性化協議会を使った債務整理

1 中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援協議会)とは

先日、企業様が中小企業活性化協議会の窓口相談に行くのに同行してきました。

中小企業活性化協議会とは、国が都道府県ごとに設置した中小企業の資金繰りを支援する機関です。多くの件で商工会議所の中に設置されています。

資金繰りに困っている企業が、自社の課題を客観的に分析したり収益改善のための計画を立てる収益力改善支援、事業計画や金融支援を行う事業再生支援、企業の再生が困難に

なった場合でも代表者や保証人が保証債務の整理を必要になった場合の再チャレンジ支援などの支援事業があります。

弁護士がよく利用するのは、事業再生支援と再チャレンジ支援であり、公正中立な機関として債権者との話し合いの中を取り持ってもらうことがあります。

2 中小企業活性化協議会を通すメリット

⑴ 初回相談は無料

いずれの事業も、初回の窓口相談は無料となっていますので、気軽に相談に行けます。

ただ、1回の相談の機会の実を上げるため、弁護士が同席したり資料を作成する等のお手伝いをすることもあります。

⑵ 債権者との交渉がまとまりやすい

中小企業活性化協議会のスタッフは、金融機関のOB、公認会計士、弁護士などが多いです。金融機関からすると、金融機関の考え方がよく分かっているOBがおり、交渉成立の

実績も多いため、返済額を減らす稟議も通しやすくなります。

⑶ 認定経営革新等支援機関が経営改善計画を策定する場合に一部費用の補助が出る

国が認定する経営改善計画の作成のプロである認定経営革新等支援機関が、このように今後の売上を増やして経費を減らしていくという経営改善計画を作る際に、企業が認定

機関に払う費用が一部公費でまかなわれるメリットがあります。当グループの税理士法人心も認定機関になっています。

3 デメリット

⑴ 本格的な支援には費用がかかる

借金額を減らしてもらう等本格的に支援を受ける場合、中立な立場の公認会計士等の関与がいるのが通常で、専門家に払う費用が高額になりがちです。

⑵ 債権カットでなくリスケジュールで終わることが多い

大幅に元金を減らしてもらう話し合いは、近年成立例も増えているものの、リスケジュールという元金はそのままで毎月の返済額を減らすだけで本当に資金繰りができないの

かが厳しくみられる傾向になります。結果的に元金が減らないままというケースが多くなります。

⑶ あくまで話し合いなので、債権者の金融機関が同意しなければ不成立で終了することになります。

4 このようにデメリットもありますが、話し合いで企業の金融機関からの借入の元金を大きく減らすには、最も実績がある機関になります。

小規模な企業でも成立例があるので、事業の再生の相談を受ける弁護士としては、まず初回相談の同行をお勧めするケースも多いです。