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破産管財人の否認権行使への対応

1 破産管財人の否認権行使とは

破産管財人は、自己破産の申立てで、ある程度財産がある場合や、借金が増えた経緯に問題がある場合に、裁判所が調査のために選任する弁護士です。

破産管財人は、破産前に問題のあるお金の使い道があれば、取り返してきて債権者に配る財産を増やすのも仕事です。

たとえば、破産者Aが、弁護士に破産を依頼した後に、母Bから借りていた20万円だけ返済してしまったとします。

破産管財人は、他の債権者は返してもらっていないのにBだけ20万円返してもらったのは不平等であるとして、Bに対し、20万円管財人に払うよう請求できます。

管財人は、Bから20万円取り返して、他の債権者にも分配します。これを、AのBに対する返済の効果を否定することから、破産管財人の否認権の行使といいます。

2 Bに理解を得られるよう説明する

ここでは、破産を依頼される方Aの立場にたって、どういう対応が考えられるか検討します。

母Bからしても、約束どおりAに返してもらっただけなのに破産管財人なる弁護士から請求されるのは、驚かれると思います。

ただ、Bが20万円を返してくれないとなると、場合によってはAが免責不許可(借金がチャラにならない)になったり、管財人がBに裁判を起こすかもしれません。

Bにより迷惑がかかるので、AからもBに説明して、20万円を管財人に払うよう説得することが考えられます。

3 破産者や第三者が破産財団に組み入れる

それでもBが20万円を払えないときには、A自身が収入や財産から20万円を払うことも考えられます。

また、ご兄弟等第三者に援助してもらって20万円を用意することも考えられます。管財人としては、20万円Bに払っていなければAの財産として残っていたは

ずの20万円を、他の債権者に配れればよいので、誰が20万円を用意しても柔軟に対応することが多いからです。

4 破産管財人の否認権行使は、依頼する弁護士に相談せずに勝手に返済してしたり、財産を渡したことが原因で問題が生じるケースも多いです。

勝手に返済したり財産を渡す前に、依頼する弁護士によく相談しましょう。

 

自己破産しても続けられる事業

1 法人代表者や個人事業主さんにとって、事業が続けられるかどうかは今後の生活の立て直しのために非常に重要です。

それにもかかわらず、破産法にも、弁護士や裁判官向けの本にも、事業を続けるための条件を明示しているものはありません。

相談する弁護士や、あたる裁判官の判断によっても分かれるケースがあるものですが、

2 法人の場合、事業を譲渡する必要がある

法人の事業は、少なくとも破産する法人のまま続けることはできません。

法人の資産は、破産手続では破産管財人が全部現金化し、全契約を解除しなければならず、何の収入も得られないからです。

そこで、別法人や知人に事業を譲渡して、代表者は譲受会社のもとで従業員として雇われたり、専属的な下請けとして仕事をもらう形式で事業を続けるケースもあります。

ただ、この場合も無償で譲渡するだけでは、破産管財人が否認することになりますので、適切な対価で法人の資産を買い取ってもらう必要があります。

法人の資産には、車や売掛金のような目に見えるもの以外に、借りている物件の敷金や機械類も含まれますので、一括で買い取ってくれる方が見つかるかが最初のポイントです。

3 個人事業の場合は、後払いや事業所・在庫の必要性による

個人事業者の場合、法人と異なり、全契約や全財産をなくすわけではありません。

ただ、破産手続で一部だけ優先して返済することが禁じられる点と、生活に必要最小限の資産しか残せない点がハードルになります。

たとえば、外注や従業員を雇うと、締日があって後日支払うことになるので、一時的に未払いの外注費等が発生しており、銀行の借金に優先して外注費を払うことが問題となるケ

ースがあります。

また、店舗がいる場合も、破産では明渡しして保証金を返してもらう必要があるし、在庫商品を抱えることもできないので、続けるのが難しい類型です。

逆に、自分が身一つで働けばよい形態は続けやすいです。元請に仕事に必要や機械や資材を用意してもらうことで仕事を続ける方もいらっしゃいます。