会社の破産における製品・原材料の処理の注意点

1 完成品,半製品,原材料と大きく3段階に分けられる

会社が自己破産する際には,サラリーマンの破産にはない多くの問題があります。

そのうちの一つに,完成品,半製品,原材料の処分があります。

会社が自己破産する直前まで事業を続けている場合,提供している商品やサービスの進ちょく状況はバラバラです。

メーカーであれば,原材料を仕入れただけの段階,原材料を加工して完成品にする途中の段階(半製品といいます。),完成品になって出荷を待っている段階の大きく3つに分かれます。

サービスを提供している会社でも,案件の契約をしたが未着手の段階,案件を契約して完了までの途中,案件を完了しているが何らかの理由で提供し終わっていない場合等と仕事の進ちょくによって対応が異なりますが,ここではメーカーを例に説明します。

2 原材料の段階

原材料では,仕入先から原材料を受け取っているが仕入代をまだ支払っていないことがよくあります。

仕入先に返品することには問題があります。

自己破産では,債権者をみんな平等に扱う,つまり一部の取引先だけ支払ってはいけないという決まりがあり,原材料の返品はその仕入先だけ優遇したことになるからです。

また,原材料を後払いで仕入れた直後に破産すると,いわゆる計画倒産を疑われ,会社の代表者の借金が免責されなかったり,刑事罰を受けるおそれもありますので,

自己破産する時期を決める際にも注意が必要です。

3 半製品の段階

半製品は,まず,完成させて代金を全額受け取ることを目指すか,出来高で精算するか(進み具合に応じて代金のうち一定額を受け取る)を検討します。

あとわずかで完成するなら,従業員等に日当を払って完成させることもありますが,難しければ出来高で精算することになります。

出来高が決まらないうちに,自己破産する会社側から他の業者に任せてしまうと,本来であれば会社が受け取れたはずの財産を無償で渡してしまったと言われることもありま

す。

基本的には,自己破産を申し立てて廃業した日時点の現状を維持し,破産管財人という裁判所が選ぶ弁護士に任せることが多いです。

4 完成品の段階

完成したばかりの場合は,自己破産に伴って廃業すると,運送業者が使えない等で普段どおり引き渡すことができないのをどうするか検討しておきます。

また,未払いが残っている業者に完成品を持っていかれるトラブルがありますが,最悪の場合は会社の代表者が隠した等疑われて代表者の借金が免責されなかったり,

刑事罰の対象になりうるので,どうやって完成品を持っていかれないように保管するか検討しておく必要があります。

不良在庫になっている場合も,勝手に廃棄すると,本来であれば安値でもお金に換えられたはずのものが0円になってしまったと言われることもあります。

5 このように,会社の破産では製品や原材料をめぐって,様々な検討すべき点がありますので,会社の破産の経験豊富な弁護士と一緒にご検討ください。