ようこそ、弁護士 岩橋 毅彦のブログへ

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重要判例解説令和6年版

毎年有斐閣から重要判例解説という、去年1年間に出た実務上意義の大きい裁判例をまとめた書籍が出版される。弁護士の必読書の1つといえる。

その中から、私が注目したものを一つ紹介する。大阪高裁令和5年12月19日判決(令和5年(ネ)62号)である。

1 事案の概要

Xは、協同組合Yの組合員であり、501万円の出資を行っていた。Xは通常民事再生を申し立てて令和2年1月開始決定を得て、令和3年3月末のYの事業年度末でYを脱退して出資金を払い戻す意思表示をした。YはXに対して約1000万円の貸金債権を有しており、令和3年2月に1000万円の貸金債権の債権届出をするとともに、出資金払戻債務を対当額で相殺する意思表示をしたが、XはYに対し501万円の支払を求めて提訴した。

出資金は、前年9月までに脱退の申込があれば、翌年6月の総代会で払戻金額を確定して総代会終了後に払戻しを行うので、Yの相殺は停止条件不成就の利益を放棄して行われた。

2 判決の要旨

民事再生法92条1項は、再生債権者が相殺によって消滅させることのできる債務の範囲を制限することで、再生債権者の相殺の担保的機能への期待と再生債務者の事業の再建との調整を図ったものである。

同項により再生債権者がすることが許される相殺における受働債権にかかる債務は、再生手続開始当時少なくとも現実化しているものである必要があり、将来の債務など当該時点で発生が未確定な債務は、特段の定めがない限り含まれないと解するのが相当である。

このことは、旧商法上の会社整理で停止条件付債務を内容とする契約が会社の整理開始前に締結された場合であっても条件が整理開始後に成就したときは相殺を禁止していると解されていたこと(最判昭和47年7月13日)にも整合する。

として、Yの相殺の主張を認めず、Xの出資金払戻請求を認容した。

(参考:民事再生法92条1項:再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第94条第1項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで相殺することができる。)

会社の破産と代表者のその後の仕事

1 会社が破産しても、代表者が仕事をすることはできる

会社が破産・倒産する場合、その会社では破産後に仕事をすることはできません

ん。そのためか、会社破産を弁護士に相談に来られる会社代表者の中には、代表者自身も仕事をしてはいけないとお考えの方もいらっしゃいます。

破産した会社の代表者であったというだけで仕事ができないわけではありません。今後の生活もあるので、就職して収入を得ることは何ら悪いことではありません。

ただ、全く制約がないといえば嘘になるので、破産する会社の代表者が、いつからどのような仕事をするのがよいかお伝えします。

2 会社の保証債務がない場合は制約はほぼない

会社が破産する場合、代表者は会社の借入の連帯保証人になっているのが通常です。

保証債務がない場合は、代表者自身は何の債務整理もしないのが通常なので、代表者が仕事をするのは、業法で破産した会社の代表者であった場合につけないもの以外に法的な制約はないといえます。

ただ、会社の破産管財人から会社の残務処理に協力を求められた場合に協力したり、会社の債権者集会という裁判所に出廷する機会があるので、平日の昼間に数回仕事を休んででも協力する必要があります。

3 代表者も自己破産する場合は、役員に就任したり資格の制限に注意

会社の多額の保証債務を負っている代表者は、自身も自己破産することが多いです。

この場合、別の会社の役員に就任していても、退任しなければなりませんし、警備員・保険外交員・古物商等に破産法の資格の制限があるので、就く仕事に注意が必要です。

4 個人事業をする場合は、会社の財産を使わず、後払いをしないのが原則

就職はすぐにしても問題ないですが、個人事業の場合はやり方に注意が必要です。

まず、破産する会社の財産(機械、事業所、車等)を使って事業をするのは基本的に認められません。破産する会社の財産は全て破産管財人が売却しなければならず、会社から個

人に無償で引き継ぐことは財産隠しになります。管財人がついてから会社の財産を代表者が適切な値段で買い取って使用するなら、管財人がつくのを待つことになります。

また、従業員を雇ったり後払いの仕入や外注を使うと、売上が思ったタイミングで入らなかったときに個人で負債を負う可能性があります。

代表者が破産するのに負債を新たに負うのは問題があるので、一人親方等負債を負わない形態にする必要があります。

5 代表者が次の仕事に就くことは基本的に望ましいですが、やり方や時期は考える必要がありますので、詳細は弁護士までおたずねください。

 

 

浪費がある場合の同時廃止か管財事件か区別

1 自己破産には、同時廃止と管財事件の2種類がある

自己破産は、裁判所に申請して借金を0にしてもらう手続きです。

自己破産には、同時廃止と管財事件と2種類あります。

同時廃止は裁判所に納める費用が約1万5000円ですみ、裁判所に行かないでよいケースが多いですが、管財事件は裁判所に納める費用が最低20万円以上かかり、裁判所に原則行かなければなりません。

自己破産を依頼する方は、管財事件でなく同時廃止になる方がメリットが大きいでしょう。

ただ、浪費が多いと免責観察といって、借金を0にしてよいかどうか裁判所が選

ぶ管財人という弁護士の指導・監督が必要という理由で管財事件になります。

ここでは、パチンコや競馬、服の買いすぎ、投資の失敗等の浪費がどの程度で管財事件になるかという感覚をお伝えします。

2 浪費の時期と金額

まず、浪費の時期が自己破産の申請に近く、金額が多いほど管財事件になります。

たとえば弁護士に自己破産を依頼した後にギャンブルをした場合は、依頼後の総

額が20万円程度でも管財事件になるのが通常です。

弁護士に依頼する直前までギャンブルしていたが、依頼後はやめているケースで

は、月に5万円程度までなら同時廃止になりやすいでしょう。

借金が払えなくなる2,3年前にはやめているなら、月10万円弱のギャンブ

ルがあっても、同時廃止になりやすいと思います。

3 浪費以外に借金が増えて払えなくなった原因を説明できるか

浪費した額以外に、やむをえない出費が増えたとか、収入が下がったなど、それ

まで返済できたのに事後的に生じた原因で払えなくなったと説明できるかがポイント

になります。

たとえば、同じ月額5万円のギャンブルがあったとして、子どもの大学進学で想定以上に教育費が増えたなら、払えなくなったのはギャンブルでなく子供の進学であるとして、同時廃止になりやすいでしょう。

4 債務総額

自己破産で免責(払わなくてよくなること)してもらう債務額もポイントになり

ます。

子供の奨学金や住宅ローンのような使い道が明確なもの以外に、500万円以上借金があると管財事件になりやすいといわれています。

5 このように、同時廃止か管財事件かは、様々な事情を考慮して裁判所が決めますが、弁護士に見通しを聞く場合は、自己破産の経験豊富な弁護士に聞くことをお勧めします。

会社代表者の手続費用を会社の財産から準備することについて

1 会社代表者の費用と会社の費用を両方用意しなければならない

会社が支払いができずに倒産する場合、弁護士に依頼して会社の自己破産をするのが通常です。

会社が支払いができないと、連帯保証人である代表者に対して一括請求されますので、会社代表者も自己破産しなければならないケースが多いです。

会社と会社代表者が両方破産するとしても、別人格なので、会社の破産費用と会社代表者の破産費用の両方を準備しなければなりません。

2 会社代表者の費用は代表者の財産から、会社の費用は会社の財産から用意するのが建前

会社の財産と会社代表者の財産は、破産手続では明確に区別されます。会社代表者の破産費用は、代表者自身の財産や収入からまかなうか、ご親族等に援助してもらうのが王道で

す。

会社の売上から会社の破産の費用をまかなうのはよいですが、会社の売上から会社代表者の破産費用までまかなうのは、建前上は会社の財産を代表者が横領したとか背任であると

いわれる可能性もあります。

3 会社代表者の費用も会社の財産からまかなうことが許容される場合もある

会社代表者がギリギリまで会社の事業を続けようとして個人資産がなくなるまで会社に投じてしまったときに、会社は破産できても会社代表者が費用がなくて自己破産できなけれ

ば、代表者は経済的にやり直す機会がなくなってしまいます。

これはあまりに酷なので、会社代表者が自身の財産で費用を準備できない場合には、会社の売上等の財産から代表者の破産費用を出すことが許容されるケースも多いです。

たとえば、会社代表者が会社に対して貸付を行っていた場合は、貸付金を回収して破産費用を捻出する等の説明をすることがあります。

会社代表者が役員報酬を長らくもらっていなかった場合は、役員報酬として破産に必要な費用を会社から受け取ったという説明も考えられるところです。

このように、会社代表者に資産がなくても、会社の財産や売上から破産費用を捻出できてやり直せるケースもありますので、詳細は弁護士までおたずねください。

住宅ローンが払えないときの対応

1 住宅ローン会社で支払額を見直す

収入が減って住宅ローンが払えなくなる方の相談はよくあります。住宅ローン以外にほとんど借金がない方の場合、最初に考えるのは住宅ローン会社に相談することです。

借り換えで返済期間が長くならないかや、ボーナス払いをならしたり、返済期間を延ばすことで、支払額が減って資金繰りがつくケースもあります。

2 住宅ローン以外の借金の任意整理やおまとめローン

住宅ローン以外や車のローン以外の借金が数百万円あるなら、住宅ローン以外の借金の返済額を減らす方が効果的なことが多いです。

住宅ローン以外の借金は、利率も高く、借入額の割には返済額が大きく設定されていることが多いからです。

おまとめローンが組めて、返済先が一本化できて、金利も下がり、返済額も減るなら一つの解決になります。

ただ、おまとめローンで一部しかまとめられないケースや、返済額が減らないケースも多いです。

任意整理という、弁護士等の専門家を通した分割払いの話し合いなら、金利を0に近づけて毎月の返済額もおおむね5年(60回)払い程度まで減ることが多いです。

3 個人再生

住宅ローン以外の借金がかなり多くなると、分割払いの話し合いでは支払いきれなくなり、個人再生という裁判所でやる手続きを検討します。

住宅ローンは約束どおり支払い続けて自宅を残し、それ以外の借金はおおむね5分の1まで減るので、住宅ローン以外の借金の負担は大きく軽減されます。

4 不動産の任意売却やリースバック

住宅ローン以外の借金が少なく、自宅を手放してもよいと思える場合は、自宅を任意売却するのがよいでしょう。

住宅ローンを完済できないと売れないという不動産業者等もいますが、実際は住宅ローンの会社が担保を外してくれれば売れるので、住宅ローンの残額を下回っても売れる場合が

あります。

また、自宅に住み続けたいが自宅の所有にこだわらない方なら、リースバックという、自宅を不動産業者に売って一時的に現金を得て、賃料を払って住み続けるケースもありま  す。

5 自己破産

どうやっても住宅ローンが払えない場合や、離婚等で持ち家を維持するメリットがなくなっている場合は、自己破産するのが最も楽になる方法です。

自宅は手放すことになりますが、借金はゼロになって、収入があれば少しずつ貯金できるようになるでしょう。

相続財産清算人の選任申立てとは

1 相続財産清算人は相続人がいないケースで選任される

相続放棄した方から、相続財産清算人の選任申立ての相談を受けることがあります。

以前は、相続財産管理人といわれていましたが、令和5年4月1日の民法改正以降は、相続財産清算人といいます(令和5年4月以降も相続財産管理人という制度はあるのです

が、権限が縮小されて使うケースは少なくなっています)。

相続財産清算人は、相続人がいないケースで、相続財産を利用したい人や相続の対象となるはずの負債を払ってほしい人が裁判所に申請することで選任されます。

ほとんどのケースで、亡くなった方の住所地を管轄する地域の弁護士が選ばれます。

2 相続放棄した人が管理責任を免れたいとき

亡くなった方の子どもや兄弟など相続人となる可能性がある人全員が相続放棄をしても、たとえば相続財産である不動産に居住したり物を保管している場合

は、管理責任がありますので、不動産が崩れて通行人がケガをした場合等に損害賠償請求を受ける可能性があります。

これを免れるためには、全員の相続放棄が終わった後に相続財産清算人の選任申立てをします。相続財産清算人から自宅だけ買えば、相続財産である自宅に住み続けることがで

きるわけです。

3 債権者が相続財産から支払いを求めたいとき

亡くなった方が税金を滞納しており、不動産や保険など財産がある場合、税務当局は不動産や保険をお金にかえて税金を取り立てる必要があります。

このとき、税務当局が相続財産清算人の選任申立てをします。

4 特別縁故者が財産分与を得たいとき

亡くなった方の介護を長年したが血がつながっていない場合に、特別縁故者として相続財産から支払いを受けられるケースがあります。

特別縁故者となる予定の方が相続財産清算人の選任申立てをします。

5 費用やスケジュールなど

相続財産清算人の選任申立ては、一般の方なら弁護士を依頼するケースが多いでしょう。弁護士の費用のほか、裁判所に支払う予納金が相続財産清算人の報酬を確保するために

必要で、現金化しやすい預貯金等が多ければ0円のケースもありますが、一般には70万円~100万円など相当額が必要です。

ただし、相続財産が現金化できたときには返ってくるケースもあります。

相続財産が全てお金にかわって債権者の皆さんに平等に配られるまで続くので、不動産が複数ある方などは1年以上かかるケースもあります。

民事裁判の進行

1 民事裁判とは

裁判を起こすことや起こされることは、人生に一度もない人の方が多いでしょう。弁護士にとっては日常ですが、一般の方が裁判所からの書類が突然届いて驚かれるのも無理はありません。

裁判にも、刑事裁判、家事審判、家事調停、民事裁判など多くの種類があります。

民事裁判は、主にはお金にまつわる民間同士の訴訟をいいます。貸したお金を返してほしいとか、交通事故にあったので損害賠償請求したい、建物を明け渡してほしいなどが民事裁判です。ここでは民事裁判の一般的な流れをお伝えします。

2 訴状を提出し、被告に訴状が送達される

民事裁判は、原告(訴える人)が訴状を裁判所に提出するところから始まります。

裁判所は、基本的な要件を確認し、問題がなければ被告(訴えられる人)に訴状を送ります。

被告は、訴状が送達されたことで訴えられたことや訴えの内容を知ることになります。

3 被告の答弁書の提出

被告は、裁判所から、第1回の裁判の期日の1週間前を目途に、答弁書という自分の言い分を書いた書類を提出することを求められます。

提出せず裁判の期日にも出頭しなければ、原告の言い分どおりの判決が出ますから、被告は答弁書を提出する必要があります。

4 期日

第1回の裁判期日は、原告は出頭しますが、被告は簡単な答弁書を提出しておいて欠席することも多いです。

すると、2回目の期日が指定され、そこまでに準備書面という本格的な反論書面や証拠を出します。

近年は、裁判所に行かず、web会議という双方の弁護士と裁判官がwebでつないで期日を行うケースが増えています。

5 和解の提案

何度か準備書面を双方が出し合うと、裁判官から和解の提案があるケースが多いです。

たとえば、500万円請求していて、裁判官から200万円を払って和解をしたらどうかと勧められたとします。

原告被告双方が200万円でOKとなれば、和解で裁判が終わります。

7 証人や当事者の尋問

書面だけでは分かりにくい場合、裁判官が原告・被告本人や、証人となる方を尋問することもあります。

尋問には、弁護士に依頼されるなら想定問答等を十分に打ち合わせして臨むとよいでしょう。

8 判決

裁判官が判決を書きます。原告か被告の一方が全部勝つか、一部だけ原告の請求が認められることもあります。

司法修習生と倒産実務修習の講師

1 司法修習生とは

司法修習生は、司法試験に合格して、弁護士、検察官、裁判官になるための研修を受けている人をいいます。

私も10年以上前ですが、司法修習生として弁護士事務所、裁判所、検察庁、司法研修所で研修を受けました。

私が修習生のときは給料が出ていましたが、一旦司法修習中の生活費が貸与される(返還義務がある)形になり、2025年現在は月額約15万円の給付金が出るそうです。

2 司法修習中に倒産事件を経験するとは限らない

司法修習生は、修習中に、刑事事件と一般的な民事裁判は経験します。

二回試験という、司法修習を終えた後の試験に合格しないと弁護士、裁判官、検察官になれないのですが、この試験科目に刑事事件と民事裁判があるからです。

また、検察庁では刑事事件しか取り扱っていませんので、刑事事件は修習生は誰もが複数見ることになります。

倒産、交通事故、相続等の案件は、修習に行った弁護士事務所や裁判所で行われてるのを見るケースもありますが、配属される弁護士事務所や裁判所によっては見ることができないケースもあります。

修習中に経験する機会がなければ、弁護士になってから研鑽を積むほかありません。

3 倒産実務修習

先日、愛知県弁護士会の倒産実務委員会が主催する倒産実務の修習で、他の講師と一緒に修習生のゼミの講師をする機会に恵まれました。

修習生や他の講師(弁護士)と一緒に、個人事業者の自己破産や、サラリーマンの個人再生の架空の案件を題材に、どのように実務で対応するか議論するものです。

今年でこの講師も4年目になりますが、実務の世界でも答えが出ていない悩ましい問題もあり、他の弁護士がどう対応しているかきいたり、実務にはついていないものの理論は

勉強している修習生の疑問点に回答しようとすると、自分はなぜこういう対応をしてきたのだろうかと振り返る良い機会になります。

自己破産は件数も多く、経験している修習生も多かったですが、個人再生は経験している修習生は少なかったです。

債務整理を数多く扱っている事務所に所属しているからこそ、日々経験できるものも多いと感じます。

連帯保証人の時効の援用

1 会社の借入の連帯保証人も時効の援用は可能である

最後の借入又は返済から5年以上たつと、時効にかかって借金を返さなくてよくなるというのが消滅時効です。

時効は、援用といって法律上正しく主張しなければ効果が発生しないので、弁護士に依頼して時効の援用をしようという方は少なくありません。

会社の取締役だった方が、会社の借入の連帯保証人であるケースはよくあります。

連帯保証人が時効の援用をすることは可能です。ただ、ご自身で借りた場合と違う独特の注意点があります。

2 主債務と保証債務のどちらの時効の援用も可能である

法律上、借入をしている会社を主債務者、会社の借金を主債務、代表者やご親族が連帯保証しているのを保証債務といいます。

連帯保証人は、主債務の時効の援用もできるし、保証債務の時効の援用もできるのが基本です。

これが生きるのは、たとえば連帯保証人が保証債務について承認すると、保証債務は承認してから5年間は時効にかかりません。

しかし、主債務はそれにかかわらず時効が進むので、最後の借入や返済から5年たてば、連帯保証人が主債務の時効を援用することで借金を払わなくて済むようになる可能性があ

ります。

3 主債務の時効がのびていると、保証債務の時効ものびているケースがある

たとえば主債務者の会社に対して裁判が起こされると、主債務だけでなく保証債務の時効ものびてしまいます(民法457条1項)。

主債務者が敗訴して判決が確定すると、時効の期間は判決確定から10年にのびます。この結果、保証債務の時効も判決確定から10年間にのびてしまいます。

また、主債務者が借金を承認すると、主債務だけでなく保証債務も承認から5年間は時効にかからなくなります

このように、連帯保証人からすると、あずかり知らないところで時効の期間がのびているケースもあるので、注意が必要です。

4 まとめ

保証人が時効の援用をするときは、主債務者に対するアクションによって時効が成立するか変わるケースも多いです。

保証債務の時効を援用するのか、主債務の時効を援用するのかも含めて、弁護士にご相談ください。

個人の通常民事再生

1 債務額が5000万円を超えると個人再生は選択できない

個人の方が自宅を残したり事業を継続して借金の負担を減らしたいとき、任意整理(分割払いの話し合い)で払い切れなれなければ個人再生を選択することが多いでしょう。

ただ、個人再生は、債務額が5000万円(計算方法は細かいので詳細は弁護士までおたずねください。)を超えると選択できません。

保証債務の額が大きい方や個人事業主の場合、5000万円を上回る負債があるケースもまれではありません。

この場合、個人再生ではなく通常民事再生という手続きで、裁判所を通じて借金を減額することを検討します。

2 通常民事再生と個人再生の違い

⑴ 借金の減る額

個人再生が負債額に応じて10~20%まで借金が減らないと決まっているのに対して、通常民事再生では清算価値(持っている財産の時価)まで減額するこ

とができます。たとえば負債額が6000万円で清算価値が300万円の場合、うまくいけば借金が300万円まで減額でき、5%しか借金を払わなくてよいことになります。

⑵ 裁判所に払う費用

通常民事再生は、監督委員や調査委員といった第三者的立場の弁護士が必ず選任される運用になっており、予納金(裁判所に支払う費用)は個人再生が2万5000円~

25万円程度なのに対し、通常民事再生は30万~100万程度と高額になっています。

⑶ 債権者の賛成の数え方

基本的に個人再生も通常民事再生も債権者の過半数の賛成が必要ですが、賛成とも反対とも意思を示さなかった場合、個人再生では賛成したものとみなしますが、通常民事再

生では反対したものとみなされます。

これにより、債権者が積極的に賛成に回ってくれないと通常民事再生は成功しません。

3 まとめ

近年通常民事再生の件数は、2⑵の予納金が高いこともあって減少傾向にあります。

その分通常民事再生の経験がある弁護士は少なくなり、個人再生より複雑であることから、専門性が求められる状態になっています。

負債額が5000万円を超えるが、事業を続けたり資産を残したい方は、通常民事再生に詳しい弁護士にご相談ください。